「安保法制」に反対した財界人・丹羽宇一郎

  丹羽宇一郎さん(前伊藤忠商事会長)が、「中国に甘い」〝として嫌中派〟から酷い非難に晒されている。民主党政権の時、初の民間出身・中国大使(2010~12年)を務めた頃から非難が始まったという。

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 今回、成立した「安保法」について朝日新聞のシリーズ『対論』で、丹羽氏は大要次のように語っておられる。
――安保法の成立は、日本の経済界としては喜ぶべきことではない。これから各地で違憲訴訟が続発して混乱するのではないか。政治に波風が立つことは、経済界としてもやりにくくなる。
――海外から「日本はどういう国になるのか」と警戒され、「同じような製品ならば日本から買わなくてもいい」となりかねない。安倍政権の経済政策にとっても、プラス材料にはならない。

――中国も「軍国主義化だ」と反発し、中国経済界は韓国などを重視し、「日本は頼りにならない」と考えるかもしれない。
 そもそも誰が見ても戦争に近づく法律で、個人的にも反対だ。
 一番の問題は、考えてもみなかった国を敵に回す可能性があることだ。テロの標的にもなりかねない。どうして日本の安全と平和に役立つのか。
 世界のどの国とも仲良くやるのが日本の立ち位置だ。資源や食料などあらゆるものを海外から買っているからだ。

 実に明快かつ率直だ。ふと、故・品川正治さん(元・経済同友会終身幹事)のことを思い出した。憲法から雇用問題まで幅広く主張されていた。西日本新聞(2005年3月6日付)の論壇『いま、この時代に』から引用してみる。見出しからして大胆である。「改憲叫ぶ財界~利益のため米戦略に追随」。

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   (右から2人目・品川正治氏、3人目・水島朝穂・早稲田大教授)

――超大国(米国)が戦時体制(イラク戦争)にあるときに、その国と安保条約を結ぶ日本が改憲を言いだせば、平和憲法を捨てる以外の道を取るのは難しい。
 「財界の総本山」とされる日本経団連が武器輸出三原則の緩和提言に続いて憲法九条を改正し、集団的自衛権の行使を明記するよう求める報告書をまとめた。私は無節操ぶりが恥ずかしい。
――米国は軍産複合体国家であり、その軍需産業と頻繁に交流している企業や、米国を巨大市場としている大企業のトップは米国と利害が一致している。彼らの改憲は、自分たちの商売に利するのが目的だ。

――私は今こそ、日本は平和憲法を堅持し、国際貢献をすべきだと強調したい。平和憲法のタガがあったために、日本は60年もの間、外国人を殺していない。この事実は世界史上でも稀有なことであり、世界に誇れる規範である。
――私は1944年(昭和19年)、兵士として中国戦線に送られた。本当の戦争を知っている人間は「平和主義は卑怯」などと威勢のいい言葉は口にできない。(前線から遠く離れた場所にいた)参謀や高級将校は、市民を苦しめた空襲も食糧難も知らない人が多い。
 私の戦争体験は財界のなかでは異論かもしれないが、一般市民からすれば、圧倒的多数派だろう。

 ところで、経団連は15日、自衛隊の活動範囲の拡大を見込んで、政府に防衛産業の基盤強化を求める提言を決めた。背景には防衛関連事業から企業撤退が相次いでいる事情がある。だが、経済同友会の小林喜光代表幹事は「積極的に防衛産業をプロモートすることはあまり考えたことがない」と述べ、経団連と距離を置いた。

武器輸出や共同開発

 また、防衛省は25日、軍事利用を目的に、大学や研究機関に研究費を支給する仕組みをつくり、109件の応募の中から9件に支給を決めた。米国ではすでに「軍産学共同体」による軍事技術の研究・開発体制が定着している。
 しかし、日本の大学は戦後、軍事研究と一線を画してきた経緯があり、今回の応募には異論も多いという。

 こんにちの財界には、第二、第三の〝品川・丹羽〟はいないのだろうか?

安保法制に伴う防衛費増大

   「安保法案」は19日未明、自・公と野党三党(次世代の党、元気にする会、新党改革)の賛成多数で成立した。
 衆院特別委での強行採決に続き、参院特別委でも〝不意打ち〟による大混乱の中での決着だった。

   参院特別委で採決
   (参院特別委で不意打ち採決。9/17。NEWS23より)

 新たな安保法制の核心は、自衛隊に対する憲法の縛りをゆるめ、時の政権の「判断」により海外での武力行使に道を開くことにある。
 国会審議を重ねるほどに首相や防衛大臣の答弁は二転三転し、「総合的に判断する」と繰り返すだけであった。

   広がる共同行動
   (米軍・自衛隊の共同行動の範囲拡大を
    語る米軍大尉)

 法は成立しても残った課題は数多い。――法制を政権がどう運用するのか。自衛隊の「活動」はどこまで広がるのか。軍事に偏らない外交的努力はどうなされるのか。文民統制は果たして機能するのか。米国の国防費削減は自衛隊の〝参戦〟を組み込んでいるというが、「密約」はないのか。

   国の予算が厳しいので
   (米国の財政事情で自衛隊による肩代わりを
    求める元少尉)

 私がここで特に問題にしたいのは、法成立に伴い防衛費がどこまで膨らみ、その負担はどのように国民に負わせるのか、である。国会審議ではあまり問題にされなかった。
 安倍首相は、5月の会見で「この法制で防衛費が増えたり、減ったりすることはない」と説明している。――果たして、予算の裏打ちなしに「抑止力」が高まるのか?

   機動戦闘車
   (機動戦闘車)

 「法制度が変われば、部隊編成や装備に影響を与えないはずがない。新たな装備が必ず必要になる。手当などの人件費も増える」(軍事評論家・前田哲男氏)というべきだろう。
 17年度中に新設する「水陸機動団」が必要とする新たな装備だけでも、機動戦闘車・水陸両用車・輸送機オスプレイといった具合だ。(来年度の防衛費概算要求については、当ブログ9/2付「膨らむ一途の防衛予算」を参照願いたい)

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   (輸送機オスプレイ)

 一方、経団連も今月15日、「武器輸出を国家戦略として推進すべき」との提言をまとめた。自衛隊の活動範囲の拡大を見込んで、防衛装備庁(10月発足予定)に対し輸出促進、防衛装備品の生産拡大に向けた協力を求める内容だ。

 さて、政府はこうした膨らむ防衛費をどのような税金で賄う算段なのだろうか?
 今月10日付の朝日新聞によると、――日本の財政は先進国で最悪。安倍政権は6月末、20年度までの財政健全化計画を決定。社会保障費以外の政策予算の伸びを、3年で1千億円程度とする「目安」をもうけた。
 しかし、「中期防」の増加幅だけで「目安」を超え、安保関連予算で20年度の目標達成はさらに困難だ。
 ちなみに、GDPに対する日本の借金残高(1千兆円)は233%で、財政危機に陥ったギリシャより悪い。日本の大戦末期(204%)よりも借金を抱えた状況だ。
 (野党は「戦争法案だ」と批判するが)「戦争を始める前からこれほどの債務を負っていた国はなく、財政面から『戦争のできる国』にはなれないことは明らかだ」と土居丈朗・慶大教授は話している。

   15.9.10朝日・借金1千兆円

 過去の太平洋戦争(日中戦争を含む)で使った費用は約1900億円(現在の4千兆円に相当)で、国家予算の70倍超。GDP比8.5倍だという。当時の政府は、容赦なく国民に重負担を押し付けた挙げ句、戦後、ハイパーインフレで国民資産を犠牲にしたのだった。

   太平洋戦争

 今回の安保法制に関して、高齢者は「自衛官や若者は大変だろうが、わしらには関係ない」という声も少なくなかった。――いや、違うよ!年金はさらに削られ医療費負担は増える上に、消費税は10%以上に膨らむこと必至だよ。(消費税は1%で2.5兆円。他の先進国では20%前後が普通)

   SIELS若者たち
   (SEALDsの若者たち)

 秋の臨時国会から来夏の参院選をしっかり視野に入れて、財政面からも安保法制の「廃案」に向けて、野党の協力と自公に代わる受け皿作りに全力を尽くしてほしい。SEALDsなどをはじめ18歳の若者たちも選挙に加わってくる!

鄭玹汀さんのSEALDs批判について

  「安保法案」、政府・与党は17日、18日に採決を強行しそうだ。
 これに対して、国会前をはじめ全国各地で連日反対行動が行われている。

   SIELS若者たち

 私は、こうした様々な反対集会やデモの中で、「SEALDs」と称する学生らの反対行動に強く惹かれた。これまでにないスタイルである。AP通信の報道表現を借りると、「(SEALDsの行動は)これまでの労組動員や老いた左翼活動家によるものと全く異なる」。

   AP通信

 このことをフェイスブックで、「若者や女性らの新たな行動に〝希望〟を見いだした思いだ」と書いた。
 ところが、知り合いの市民運動家から「鄭玹汀さんのSEALDsを読んでほしい」との勧めがあった。鄭さんという女性は、ソウル特別市出身で東大卒業後、京大研修員であるらしい。

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   (鄭玹汀さんのホームページより)

 彼女はフェイスブックで、SEALDsのホームページ上の運動方針について失望を感じたと、大要次のように書いている。
――SEALDsは「北東アジアの協調的安全保障体制の構築へ向けてイニシアティブを発揮するべきです」と主張している。しかし、日本が主導権を発揮すべきというのは、保守政治家などが主に唱えていることだ。「軍縮・民主化の流れをリードしていくポテンシャルがある」というのは独善的かつ傲慢な姿勢のあらわれといわざるをえない。
(私の意見)……鄭さんという方は、これまでの日本の平和運動について全く無知のようだ。とくに「北東アジアの安保構想」については『平和基本法』で、前田哲男・和田春樹・山口二郎・梅林宏道氏らが提言されてきた。

――また、「中国は政治体制こそ日本と大きく異なるものの、重要な経済的パートナーであり、いたずらに緊張関係を煽るべきではありません」と、「国益重視」の外交を打ち出しており、果たしてこれが「学生運動」なのか納得できない。
…… 保守政治家や財界などがかつて唱えていたのは「東アジア共同体構想」であって、鄭さんには『大東亜共栄圏』とダブって映るのだろう。この構想は中国の経済・軍事大国化によって有名無実となっている。
   国会前で村山元首相
   (国会前で演説する村山富市・元首相)

――最も驚いたのは歴史認識について、「日本はすでに侵略の反省を経て、平和主義・自由民主主義を『確立』した」と言っている。
 しかし、日本は過去の侵略戦争についてきちんと謝罪したこともなく、平和と自由民主主義を確立したこともない。彼らの無知と無自覚に「危惧」を感じている。
……故・大平正芳首相以来歴代首相は不充分ではあるが過去の戦争を謝罪しており、とくに細川護煕・元首相と村山富市・元首相は侵略と植民地支配について、「多大な迷惑を与えた」として公式に謝罪している事実を、鄭さんは全く無視している。

   SEALDsの意見広告
   (新聞の意見広告)

 私たちがいま集中すべきは、最後まで安保法案の「廃案」と安倍政権の退陣であるはずだ。SEALDsの主張や行動については、もう少し穏やかに見守ってはどうだろう。

河野統合幕僚長を解任せよ!

  これはもう、ただごとでは済まされない。――昨年12月17、18日、河野克俊・統合幕僚楊長が訪米して、米軍首脳(デンプシー統合参謀本部議長ら)に「衆院選で与党が勝利したので、安保法案は来年夏までに成立する見通しだ」と語ったという。

   デンプシー統合参謀本部議長と河野統幕長
   (デンプシー米統合参謀本部議長と河野統幕長)

 昨年、衆院選が終わり第三次安倍内閣が発足したのは12月24日、「安保関連法案」が提出されたのは通常国会が開会(今年4月26日)してからである。
 国会審議が始まるはるか以前に、「制服組」が法案成立を見込んで海外活動の拡大を謀り、米軍と一体で作戦計画を進めている隠された事実については、このブログ(「隠された二つの資料」8/29)で書いた。

   日米共同作戦の協議

 これらの実態は、まさしく〝軍部の暴走〟の現代版だ。――過去の戦争の反省から、シビリアンコントロール(文民統制)を徹底したはずだが、その大事な制度「文官優位」の原則はすでに廃止されてしまった。
 安全保障など外交防衛政策は、実質的に制服組が先導し政治家や国会はそれを追認する状況になっているのではないか。

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   (内部資料を示し政府を追及する共産党・仁平参院議員

 ゆゆしき現状である。これらを内部資料で告発した自衛官はまさに〝命がけ〟であったはずだ。これを共産党の「手柄」に終わらせてはなるまい。
 河野統幕長を国会に証人喚問して徹底的に追求し、中谷防衛相共々解任すべきである!

防衛省が隠した二つの資料

 昨日の報道によると、政府・与党は「安保関連法案」を来月11日にも成立させるつもりだという。
 とんでもない話しだ。参議院審議では、安倍首相は質問に答えようとせず自説をダラダラしゃべる。女性議員の質問に苛立ってたびたびヤジを飛ばした挙げ句陳謝する。「法的安定性など関係ない」とうそぶく首相補佐官。

 また、集団的自衛権行使の典型的事例とした「邦人救出の米艦防護」や「ホルムズ海峡の機雷掃海」は、いずれも極めて〝非現実的〟な実態が露呈した。

   イラク復興支援活動行動史2

 より深刻なのは、陸自や統幕監部が作成した重要文書が国民に隠されていた事実である。
 一つは、陸自が作成した内部文書「イラク復興支援活動行動史」。今年7月の衆議院安保特別委で野党議員が国会提出を要求したが、防衛省は一部を黒塗りにしたものを提示。結局、法案が強行採決された後に全面開示された。

   困惑する中谷防衛相
  (答弁に窮して天を仰ぐ中谷防衛相)

 黒塗りの部分は、「情報」「通信」「部隊編成」「安全確保策」「多国籍軍」などの分野である。小泉政権の時、イラク派遣に際して「非戦闘地域に派遣するので安全」と言い切ったが、実際は「一つ間違えば甚大な被害に結びついた可能性もあった」と「行動史」は記している。
イラク派遣が終わって10年、文書作成から約7年が経過したが、実態を検証するのは極めて困難だ。今後、「特定秘密保護法」を盾に国会議員にさえも開示されない恐れがある。

   法案成立前に自衛隊行動文書

 いま一つは、統幕監部が作成した内部資料によると、法案成立を見越して自衛隊の海外活動拡大を検討していたというものだ。国会審議をないがしろにするもので、シビリアンコントロールの原則を揺るがすものだ。

   法案に反対する学会員1

 明日(8/30)は、「安保関連法案」の廃案を求めて全国一斉に集会やデモが行われる予定だ。伝えられるところでは、公明党の堕落ぶりに落胆した創価学会の会員らも、反対署名や行動に立ち上がりつつあるようだ。
 何としても政府・与党の目論見を押しつぶして、廃案を実現したいものだ。
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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)