安保法制に伴う防衛費増大

   「安保法案」は19日未明、自・公と野党三党(次世代の党、元気にする会、新党改革)の賛成多数で成立した。
 衆院特別委での強行採決に続き、参院特別委でも〝不意打ち〟による大混乱の中での決着だった。

   参院特別委で採決
   (参院特別委で不意打ち採決。9/17。NEWS23より)

 新たな安保法制の核心は、自衛隊に対する憲法の縛りをゆるめ、時の政権の「判断」により海外での武力行使に道を開くことにある。
 国会審議を重ねるほどに首相や防衛大臣の答弁は二転三転し、「総合的に判断する」と繰り返すだけであった。

   広がる共同行動
   (米軍・自衛隊の共同行動の範囲拡大を
    語る米軍大尉)

 法は成立しても残った課題は数多い。――法制を政権がどう運用するのか。自衛隊の「活動」はどこまで広がるのか。軍事に偏らない外交的努力はどうなされるのか。文民統制は果たして機能するのか。米国の国防費削減は自衛隊の〝参戦〟を組み込んでいるというが、「密約」はないのか。

   国の予算が厳しいので
   (米国の財政事情で自衛隊による肩代わりを
    求める元少尉)

 私がここで特に問題にしたいのは、法成立に伴い防衛費がどこまで膨らみ、その負担はどのように国民に負わせるのか、である。国会審議ではあまり問題にされなかった。
 安倍首相は、5月の会見で「この法制で防衛費が増えたり、減ったりすることはない」と説明している。――果たして、予算の裏打ちなしに「抑止力」が高まるのか?

   機動戦闘車
   (機動戦闘車)

 「法制度が変われば、部隊編成や装備に影響を与えないはずがない。新たな装備が必ず必要になる。手当などの人件費も増える」(軍事評論家・前田哲男氏)というべきだろう。
 17年度中に新設する「水陸機動団」が必要とする新たな装備だけでも、機動戦闘車・水陸両用車・輸送機オスプレイといった具合だ。(来年度の防衛費概算要求については、当ブログ9/2付「膨らむ一途の防衛予算」を参照願いたい)

   001[1]
   (輸送機オスプレイ)

 一方、経団連も今月15日、「武器輸出を国家戦略として推進すべき」との提言をまとめた。自衛隊の活動範囲の拡大を見込んで、防衛装備庁(10月発足予定)に対し輸出促進、防衛装備品の生産拡大に向けた協力を求める内容だ。

 さて、政府はこうした膨らむ防衛費をどのような税金で賄う算段なのだろうか?
 今月10日付の朝日新聞によると、――日本の財政は先進国で最悪。安倍政権は6月末、20年度までの財政健全化計画を決定。社会保障費以外の政策予算の伸びを、3年で1千億円程度とする「目安」をもうけた。
 しかし、「中期防」の増加幅だけで「目安」を超え、安保関連予算で20年度の目標達成はさらに困難だ。
 ちなみに、GDPに対する日本の借金残高(1千兆円)は233%で、財政危機に陥ったギリシャより悪い。日本の大戦末期(204%)よりも借金を抱えた状況だ。
 (野党は「戦争法案だ」と批判するが)「戦争を始める前からこれほどの債務を負っていた国はなく、財政面から『戦争のできる国』にはなれないことは明らかだ」と土居丈朗・慶大教授は話している。

   15.9.10朝日・借金1千兆円

 過去の太平洋戦争(日中戦争を含む)で使った費用は約1900億円(現在の4千兆円に相当)で、国家予算の70倍超。GDP比8.5倍だという。当時の政府は、容赦なく国民に重負担を押し付けた挙げ句、戦後、ハイパーインフレで国民資産を犠牲にしたのだった。

   太平洋戦争

 今回の安保法制に関して、高齢者は「自衛官や若者は大変だろうが、わしらには関係ない」という声も少なくなかった。――いや、違うよ!年金はさらに削られ医療費負担は増える上に、消費税は10%以上に膨らむこと必至だよ。(消費税は1%で2.5兆円。他の先進国では20%前後が普通)

   SIELS若者たち
   (SEALDsの若者たち)

 秋の臨時国会から来夏の参院選をしっかり視野に入れて、財政面からも安保法制の「廃案」に向けて、野党の協力と自公に代わる受け皿作りに全力を尽くしてほしい。SEALDsなどをはじめ18歳の若者たちも選挙に加わってくる!

鄭玹汀さんのSEALDs批判について

  「安保法案」、政府・与党は17日、18日に採決を強行しそうだ。
 これに対して、国会前をはじめ全国各地で連日反対行動が行われている。

   SIELS若者たち

 私は、こうした様々な反対集会やデモの中で、「SEALDs」と称する学生らの反対行動に強く惹かれた。これまでにないスタイルである。AP通信の報道表現を借りると、「(SEALDsの行動は)これまでの労組動員や老いた左翼活動家によるものと全く異なる」。

   AP通信

 このことをフェイスブックで、「若者や女性らの新たな行動に〝希望〟を見いだした思いだ」と書いた。
 ところが、知り合いの市民運動家から「鄭玹汀さんのSEALDsを読んでほしい」との勧めがあった。鄭さんという女性は、ソウル特別市出身で東大卒業後、京大研修員であるらしい。

   鄭昡汀
   (鄭玹汀さんのホームページより)

 彼女はフェイスブックで、SEALDsのホームページ上の運動方針について失望を感じたと、大要次のように書いている。
――SEALDsは「北東アジアの協調的安全保障体制の構築へ向けてイニシアティブを発揮するべきです」と主張している。しかし、日本が主導権を発揮すべきというのは、保守政治家などが主に唱えていることだ。「軍縮・民主化の流れをリードしていくポテンシャルがある」というのは独善的かつ傲慢な姿勢のあらわれといわざるをえない。
(私の意見)……鄭さんという方は、これまでの日本の平和運動について全く無知のようだ。とくに「北東アジアの安保構想」については『平和基本法』で、前田哲男・和田春樹・山口二郎・梅林宏道氏らが提言されてきた。

――また、「中国は政治体制こそ日本と大きく異なるものの、重要な経済的パートナーであり、いたずらに緊張関係を煽るべきではありません」と、「国益重視」の外交を打ち出しており、果たしてこれが「学生運動」なのか納得できない。
…… 保守政治家や財界などがかつて唱えていたのは「東アジア共同体構想」であって、鄭さんには『大東亜共栄圏』とダブって映るのだろう。この構想は中国の経済・軍事大国化によって有名無実となっている。
   国会前で村山元首相
   (国会前で演説する村山富市・元首相)

――最も驚いたのは歴史認識について、「日本はすでに侵略の反省を経て、平和主義・自由民主主義を『確立』した」と言っている。
 しかし、日本は過去の侵略戦争についてきちんと謝罪したこともなく、平和と自由民主主義を確立したこともない。彼らの無知と無自覚に「危惧」を感じている。
……故・大平正芳首相以来歴代首相は不充分ではあるが過去の戦争を謝罪しており、とくに細川護煕・元首相と村山富市・元首相は侵略と植民地支配について、「多大な迷惑を与えた」として公式に謝罪している事実を、鄭さんは全く無視している。

   SEALDsの意見広告
   (新聞の意見広告)

 私たちがいま集中すべきは、最後まで安保法案の「廃案」と安倍政権の退陣であるはずだ。SEALDsの主張や行動については、もう少し穏やかに見守ってはどうだろう。

河野統合幕僚長を解任せよ!

  これはもう、ただごとでは済まされない。――昨年12月17、18日、河野克俊・統合幕僚楊長が訪米して、米軍首脳(デンプシー統合参謀本部議長ら)に「衆院選で与党が勝利したので、安保法案は来年夏までに成立する見通しだ」と語ったという。

   デンプシー統合参謀本部議長と河野統幕長
   (デンプシー米統合参謀本部議長と河野統幕長)

 昨年、衆院選が終わり第三次安倍内閣が発足したのは12月24日、「安保関連法案」が提出されたのは通常国会が開会(今年4月26日)してからである。
 国会審議が始まるはるか以前に、「制服組」が法案成立を見込んで海外活動の拡大を謀り、米軍と一体で作戦計画を進めている隠された事実については、このブログ(「隠された二つの資料」8/29)で書いた。

   日米共同作戦の協議

 これらの実態は、まさしく〝軍部の暴走〟の現代版だ。――過去の戦争の反省から、シビリアンコントロール(文民統制)を徹底したはずだが、その大事な制度「文官優位」の原則はすでに廃止されてしまった。
 安全保障など外交防衛政策は、実質的に制服組が先導し政治家や国会はそれを追認する状況になっているのではないか。

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   (内部資料を示し政府を追及する共産党・仁平参院議員

 ゆゆしき現状である。これらを内部資料で告発した自衛官はまさに〝命がけ〟であったはずだ。これを共産党の「手柄」に終わらせてはなるまい。
 河野統幕長を国会に証人喚問して徹底的に追求し、中谷防衛相共々解任すべきである!

防衛省が隠した二つの資料

 昨日の報道によると、政府・与党は「安保関連法案」を来月11日にも成立させるつもりだという。
 とんでもない話しだ。参議院審議では、安倍首相は質問に答えようとせず自説をダラダラしゃべる。女性議員の質問に苛立ってたびたびヤジを飛ばした挙げ句陳謝する。「法的安定性など関係ない」とうそぶく首相補佐官。

 また、集団的自衛権行使の典型的事例とした「邦人救出の米艦防護」や「ホルムズ海峡の機雷掃海」は、いずれも極めて〝非現実的〟な実態が露呈した。

   イラク復興支援活動行動史2

 より深刻なのは、陸自や統幕監部が作成した重要文書が国民に隠されていた事実である。
 一つは、陸自が作成した内部文書「イラク復興支援活動行動史」。今年7月の衆議院安保特別委で野党議員が国会提出を要求したが、防衛省は一部を黒塗りにしたものを提示。結局、法案が強行採決された後に全面開示された。

   困惑する中谷防衛相
  (答弁に窮して天を仰ぐ中谷防衛相)

 黒塗りの部分は、「情報」「通信」「部隊編成」「安全確保策」「多国籍軍」などの分野である。小泉政権の時、イラク派遣に際して「非戦闘地域に派遣するので安全」と言い切ったが、実際は「一つ間違えば甚大な被害に結びついた可能性もあった」と「行動史」は記している。
イラク派遣が終わって10年、文書作成から約7年が経過したが、実態を検証するのは極めて困難だ。今後、「特定秘密保護法」を盾に国会議員にさえも開示されない恐れがある。

   法案成立前に自衛隊行動文書

 いま一つは、統幕監部が作成した内部資料によると、法案成立を見越して自衛隊の海外活動拡大を検討していたというものだ。国会審議をないがしろにするもので、シビリアンコントロールの原則を揺るがすものだ。

   法案に反対する学会員1

 明日(8/30)は、「安保関連法案」の廃案を求めて全国一斉に集会やデモが行われる予定だ。伝えられるところでは、公明党の堕落ぶりに落胆した創価学会の会員らも、反対署名や行動に立ち上がりつつあるようだ。
 何としても政府・与党の目論見を押しつぶして、廃案を実現したいものだ。

「安保法案」を廃案に追い込もう!

 安倍政権は、「安保関連法案」の国会審議に先立って、米国との間に「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)の改定に合意した(4/28)。
 
  2プラス2
  (日米の2プラス2で「指針」改定に合意)

 同指針とは、言うまでもなく米軍と自衛隊が共同で行う〝戦争マニュアル〟のことである。米国は、財政難で国防費の削減に直面しており、アジア方面に戦力のリバランス(再均衡)を図る上で日本や豪州などに米軍の肩代わりを求めている。
 したがって、新たな指針では、日本が「集団的自衛権」を行使できることを前提にして、自衛隊が地球規模で米軍に協力できる仕組みにした。

  米国の対日提言

 今回の「安保関連法案」は、この新指針を法的に裏付けるものであり、『アーミテージ・ナイ・リポート』という提言書に沿ってまとめられているものだ。
 法案では、「存立危機事態」や「重要影響事態」という難解な概念を導入して、他国のための武力行使や地理的制約の撤廃、あるいは戦闘中の他国軍に補給・兵站支援などができるようになる。

  日米共同作戦の協議

 しかも、最も肝心なことは、こうした「事態」の認定は、「日米共同調整所」主導となり、それを受けた時の〝政権の裁量〟次第ということになる。

  ホルムズ海峡1

 安倍首相は国会審議に際して、「集団的自衛権」を行使できる事例として「ホルムズ海峡の機雷掃海」と「邦人救出の米艦防護」を示した。
 しかし、米国とイランは「核開発停止」で合意し緊張緩和の関係にある。仮に、海峡封鎖するとイラン自身が原油輸出できなくなる〝自殺行為〟となる。

  米艦艇の支援

 また、米艦防護に関しては、避難民の救出はそれぞれ当該国が行うと新指針で決められているのだ。いずれの事例も、極めて〝非現実的〟と言わざるを得ない。

 このような安倍政治の〝暴走〟がまかり通るのは、平和運動の衰退や戦争体験世代の減少に加えて、小選挙区制度による自民党内の異論封殺に依るところが大きい。
 各種の世論調査では、「安保法案」に反対が約6割、理解できないが8割という状況だ。国会前には連日延べ10万人が反対行動に集まっており、とくに若者の参加が目覚ましい。

  国会前の反対行動

 間もなく参議院での審議が始まるが、与野党の差は衆院より拮抗しており、世論と運動の広がり次第で「廃案」に持ち込み、安倍内閣退陣も不可能ではない。
 宗教界や創価学会、農協・漁協をはじめ自民・公明党の支持基盤に積極的に働きかけていきたいものだ。

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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)