石牟礼道子さんの死去を悼む

 一人の作家が亡くなって、これほど大きな記事になったのは稀ではなかろうか。各方面から惜しむ声が寄せられた。
 エッセイスト・作家の石牟礼道子さんが10日に亡くなられた。享年90歳。

      石牟礼道子16.5

 1969年に「苦海浄土 わが水俣病」を出版して評判が高まった。
 まず、朝日新聞の社説(2/12)を引用してみたい。
――石牟礼さんが告発したのは、公害や環境の破壊にとどまらない。社会に深く横たわる「近代」の価値そのものだった。
――恵みの海とともにあった人々の質素だが穏やかな暮らしが、いかに奪われたか。成長を最優先し欲望をかきたてる政治、科学への信頼、繁栄に酔い、矛盾に目を向けぬ人々。
 患者のかたわらで克明な観察を続けた。「東京にゆけば、国の在るち思うとったが、東京にゃ、国はなかったなあ」(苦海浄土、第2部)。

――権力は真相を覆い隠し、民を翻弄し、都合が悪くなると切り捨てる。
 石牟礼さんが大切にしたのは歴史的な視点だ。公害の原点ともいうべき「芦尾鉱毒事件」を調べ、問題の根を探った。
 「水俣」後、公害対策は進み、企業も環境保全をうたう。だが、効率に走る近代の枠組みは根本において変わっていない。

――石牟礼文学には西南戦争や島原の乱に材をとった魅力的な作品も多い。通底するのは民衆への深い共感と敬意である。
 どん底に身をおいても、人は希望をもち、隣人を思いやることができる。石牟礼さんの確信は、今の時代を生きる私たちにとって、一つの道しるべといえるのではないか。

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 石牟礼さんは、十数年前から患うパーキンソン病のため、筆を執ることがままならない。そのため、50年来の友人で評論家の渡辺京二さんが口述を書き取り、執筆を支えてきた。
――不知火海。漁師さんは『光凪』と呼んでおりました。「魚(いお)は天のくれらすもの。人間が好きにできるものではありません」
――患者さんたちは病気になっても、水俣を豊かにした会社(チッソ)をどこか誇りにして『親さま』と思っていた。親さまの親身な言葉を求めたのに、会社はお金のことしか語らなかったのです。
――2011年、東日本大震災と福島原発事故に際しては「福島と水俣で起きたことの背景にあるのは、お金が一番の生きがいであり、倫理になってしまっているということです」。
 経済のものさしだけで価値を測ることに慣れきった私たちに、お金によらない価値を人々が共有した豊饒な世界が、かつて確かに存在したことを、言葉の力によって教えてくれている。
――水俣病の公式確認から今年で60年を迎えました。でもこの60年の背後には、はるかに分厚い時間の層があったことを、まず思い浮かべてほしいと思います。
 『魚(いお)の湧く海』と言われた不知火海のほとりで、天の恵みを必要なぶんだけ分けてもらっていた人々の、何代にもわたる暮らしが積み重なった時間の層です。
(朝日新聞の「評伝」2/11より)

      img347.jpg

 「苦海浄土」は、池澤夏樹さん編集の「世界文学全集」に日本人作家の長編として唯一収録された。何度も石牟礼さんを訪れた池澤さんは追悼文を朝日新聞に寄せている。
 この他、瀬戸内寂聴さんや加藤登紀子さんをはじめ多くの人々から石牟礼さんの死を惜しむ声が寄せられている。
 2013年、天皇・皇后両陛下が胎児性水俣病患者とお忍びでの対面が実現したのも、石牟礼さんの、「50歳を超えてもあどけない顔の胎児性患者に会ってやって下さいませ」との皇后さまへの手紙がきっかけとなった。

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      (石牟礼道子さんと原田正純先生)

 ところで、長女が熊本学園大学時代に「水俣病」に関心を抱いたのは、同大の原田正純先生の影響が大きいと言っていた。卒論は「水俣病」についてだった。
 私は、『苦海浄土』と聞くと一人芝居の砂田明さんを思い出す。京都に在住の砂田さんは『苦海浄土』に導かれてご夫婦で水俣に移り住み、やがて一人芝居『天の魚(いお)』を全国各地で演じられた。

      一人芝居「天の魚」

 佐世保でも3度ほどお招きして演じていただき、大好評だった。それがきっかけで友人と水俣を訪れて、砂田さん宅に泊めていただき水俣病患者の皆さんと懇談したのは、今から40年ほど前のことだ。
 砂田さんは93年に亡くなられた。(享年65歳)その砂田さんに師事された川島宏知さんが『天の魚(いお)』を演じておられるようだ。

 心よりご冥福をお祈り申し上げたい。   合掌
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生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)