憲法九条と自衛隊ーー「平和基本法」の再検討を

  最近、労組や平和運動の活動家の皆さんから「今の自衛隊をどう説明したらいいのか」という意見を聞くことが多くなった。

  憲法九条では「戦力放棄」を謳いながら、現実の自衛隊は内閣府の調査などで9割以上の人が好印象を持つと答えるまでになった。
  なんと言っても、6年前の東日本大震災の折、10万人を超える自衛隊が派遣されて救援活動を行った、その姿に国民は感動したのだ。

     sousakuzumi[1]
     (東日本大震災で救援活動にあたる自衛隊員)

  そうした折、安倍首相は第九条の1、2項はそのままにして自衛隊の存在を明記し、改憲時期を2020年としたいと表明した。
  これには、石破茂・元防衛相をはじめ「自民党の『改憲草案』はどうなったのか」との批判・反発が出ている。

     17.5.3読売・首相インタビュー
     (5月3日 読売新聞のインタビューで語る安倍首相)

  一方、河野克俊・統合幕僚長は「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるのであれば、非常にありがたい」と発言した。本来なら自衛隊法違反で厳しく処分されたはずだが、何の処分もなかった。
  この変化はいったいなんだろうか。

     PN2015081201001782.-.-.CI0003[1]
     (河野克俊・統合幕僚長)

  国会やTVではすでに自衛隊の「違憲論争」がなくなり、自衛隊に対する社会の緊張感も薄れた。
 「政府や国会が注意しなければ、シビリアンコントロールを放棄したことになる。まさに自衛隊が『ちやほやされる事態』じゃないか」、と語るのは北澤俊美・元防衛相だ。
――自衛隊創設から3年後、吉田茂・元首相が3人の防衛大生に語った。「自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家が混乱に直面している時だけだ。君たちが日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ」。有名なエピソードである。

     64a81b26264d5fb9b06f7f6c9dcfff56[1]
     (吉田茂・元首相)

  6月28日、稲田防衛相は都議選の自民候補応援の際「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と演説した。
 稲田防衛相は記者会見で「誤解を招く言葉は撤回し謝罪する」と述べたが、「誤解」などではなく、自衛隊の政治的中立を揺るがす「自衛隊法違反」なのだ。ことの本質がまったく分かっていない。こういう人物が防衛大臣であることが恐ろしい。

     15f75f53-s[1]
     (稲田朋美・防衛相)

  「『象徴』としての天皇が被災者を励まし、救援に力を尽くす人々をねぎらう、その存在の確かさ。9条の下に置かれた自衛隊員の、誠実で効果的な救援・復旧活動が、住民の信頼にこたえたこと」――憲法学者の樋口陽一氏は著書「いま、『憲法改正』をどう考えるか」で指摘している。

  「戦争放棄」という憲法の理念と、自衛隊の現状にどう折り合いをつけるか。
 前田哲男氏らの共同著作『平和基本法』が鍵になる。
――①これまでの護憲運動の成果を踏まえて、日本の「安全保障政策の基本法」として方向づける。②「憲法にもとづく安全保障のかたち」を世界に発信する。③自衛隊を改編・縮小の方向に据えなおす「政策実施の指針」の中・長期計画に位置付ける。
 「憲法前文と9条の具現法」としての意義をもつ、としている。

     P5140017.jpg
     (前田哲男氏と私)

  しかし、過去3回ほどの提唱はいずれも護憲・平和運動の現場から受け入れられなかった。――「縮小した自衛隊」を合憲だと言うのか、との批判である。
  前田氏は指摘する。――社会党時代、政府・自民党の安保・自衛隊政策に対し厳しく批判して成果を上げたが、同政策への〝オルタナティブ〟を示す意欲に欠けていた。護憲・平和運動の側から「9条の具現化」に向けた政策提示が必要ではないか。
  前田氏らの提起に基づき3年前の8月、超党派議員による「立憲フォーラム」が『平和創造基本法案』の素案を発表したが、国会提出には至らなかった。

     thN8C1M55I.jpg
     (「立憲フォーラム」が『平和創造基本法案』の素案を発表)

  私は、基本的に賛成である。例えば、国民の9割以上が自衛隊を歓迎していると言うが、それは災害時の救援・復興活動の姿に対してであって、海外での武力行使を認めている訳ではない。米国には緊急事態管理庁(FEMA)があり、カナダ・スウェーデンでは、小規模の国防軍とは別にPKO派遣待機部隊がある。

     南スーダンPKOの陸自
     (南スーダンPKOの陸自)

  安倍政権下で、これまでの安保・自衛隊の規範が壊されてシビリアンコントロールも危うくなっている今こそ、『平和基本法』のような〝オルタナティブ〟の提示が必要だと考える。
スポンサーサイト

comment

管理者にだけ表示を許可する

最新記事
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
月別アーカイブ
カテゴリ
プロフィール

FC2USER537587ATX

Author:FC2USER537587ATX
今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)