安保法制違憲訴訟の原告団として

  「安保法制」の施行(2016年3月)からやがて1年が経つ。
  同法制は憲法違反だとする訴訟が東京など全国14か所で始まっている。
  長崎県でも被爆者らによる第一陣(6月8日、118人)、それ以外の第二陣が始まり、私も原告団に加わることにした。
  ここでは、訴訟のための「紙上ヒアリング」に記載した主な内容を紹介しておきたい。

――安保法制の制定・施行に対する思い
・ 安倍政権のもとで安保法制制定への導火線となったのは、「集団的自衛権の行使」を閣議決定するという奇策であった。
 集団的自衛権自体は個別的自衛権とともに国連憲章に定められているが、いわば例外的規定である。国際的紛争に際して国連の基本的理念は「集団安全保障」である。
  日本が他国と異なり「集団的自衛権の行使」を禁じたのは「必要最小限の実力」を超えるからという理由であった。自衛隊創設にあたって、内閣法制局は自衛権(必要最小限の実力)まで憲法は禁じていないとの解釈をした。以降、歴代政府はこの考え方を踏襲してきたのだった。

       山口繁・元最高裁長官
       (山口繁・元最高裁長官)

・ 同法案の国会審議では、自民党推薦も含む3人の参考人がいずれも「安保法案は明らかに憲法違反」と断じたのも当然であった。
  しかも、11本もの関連法案を巡って閣僚らの答弁は随所で食い違いをみせたが、安倍政権は強引に採決を強行したのだった。まさしく「立憲主義」に反し、戦後政治史に大きな汚点を残す結果となった。

     衆院特別委で強行採決
     (衆院特別委で強行採決)

――精神的被害に関わる人生体験など
・ 国は各種の訴訟に敗訴しても、素直にそれを認めず事案の改善を図ろうとはしない。
  その良い事例は、自衛隊員の人権侵害裁判である。私は、護衛艦「さわぎり」や同「たちかぜ」などいくつかの人権侵害裁判に関わり支援してきた。全国で10件以上の自衛隊員人権侵害裁判では、その大半が原告側の勝訴であり、原告側有利の和解の結果となっている。
  私は、国会でもその具体的事例を示して「自衛隊員の人権侵害は組織的・構造的なものであり、抜本的に改善すべきだ」と強く求めた。
  しかし、国(防衛省)は率直に認めようとはせず、もっぱら金銭解決に終始してきた。

     護衛艦たちかぜ・勝訴
     (護衛艦「たちかぜ」訴訟、東京高裁で勝訴)

 ・ 今回の「安保法制」施行によって、まず危険に晒されるのは紛争地に派遣される自衛隊員であり、命に関わる深刻な問題である。それにもかかわらず稲田朋美防衛相は、戦闘が続き内戦状態にある南スーダンに「紛争はない」と言い切って自衛隊員を派遣したのだった。
   私を含め子や孫をもつ親にとって決して他人事では済まされないことであり、心の底より憤りを覚える。

――日本国憲法に対する思い
 ・ 安倍首相をはじめ改憲派の最大の論拠は「押しつけ憲法論」である。
 しかし、憲法の制定過程を検証すると、米国が一方的に押しつけたわけではない。連合国総司令部(GHQ)のマッカーサー総司令官は、「戦争能力の破棄」と「民主化」という占領目的に基づいて明治憲法の改正を日本政府に命令する。
しかし、日本政府の憲法草案は明治憲法を微調整したに過ぎず、マ総司令官は独自の草案作成をGHQに命じて、三原則(天皇は最高位・戦争放棄・封建制度廃止)を基にわずか1週間で作成した。急いだ理由は、マ総司令官が極東委員会の設置によって憲法構想への介入(天皇の戦争責任追及)を嫌ったことにあると言われる。
  マ総司令官は、日本の占領・統治には「天皇制」が必要だと考え、アジア諸国に対しては日本の「非武装」を宣言し、天皇の戦争責任を免れようとした。
  一方、昭和天皇自身も、「天皇制」存続のために側近らを使って対米工作を試みており、「天皇メッセージ」(沖縄・琉球諸島の永続的占領を希望する。1947年9月)を米国側に伝えていた。
  昭和天皇はもとより今上天皇や皇太子が現憲法の擁護者であるのは、至極当然のことである。
  現在、天皇の「生前退位」が内閣や与野党の間で大きな議論の対象となっているが、改憲論者らは本来なら「天皇制廃止」を主張すべきだろう。(私が議員の頃、石破茂議員らは「象徴天皇制」と「第九条」がワンセットであることを理解できていなかった)

     天皇とマッカーサー
     (昭和天皇とマッカーサー総司令官)

 ・ 私は、非武装を謳う第九条は世界でも例がなく、先見の明があると確信する。それを現実のものとするには『世界連邦』が必要だと考えている。
 国連は国家の連合体であり各国が軍隊を持っているので、戦争が絶えない。それに対して、『世界連邦』だけが軍隊を持ち、各国は警察力程度にとどめることで戦争を防止できるとの考えだ。原爆投下に衝撃を受けたアインシュタインや湯川秀樹らを先頭に世界連邦運動が世界規模で広がった。
   新憲法を審議する帝国議会では、吉田茂首相が「国際平和団体の樹立によって、侵略戦争を防止する」と答弁。貴族院議員の高柳賢三・東大教授は「世界国家が成立すれば、各国は第九条の想定する武装なき国家となる」と解説した。
   国連改革を妨げた冷戦終結から27年、いまこそ『世界連邦』へのロードマップをつくり実践するべきだと思う。軍事費に喘ぐ開発途上国などはこぞって賛同するだろう。

――安保法制違憲訴訟の原告に加わった理由
 ・ 昨年3月、「安保法制」が施行されたことに伴い、陸上自衛隊は「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防護」という新任務を与えられて南スーダンに派遣された。同国では政府軍と反政府軍との間で戦闘が続発しており、仮に陸自が「国に準じる組織」との戦闘に遭遇すれば、憲法が固く禁じる「海外での武力行使」となる。
  「安保法制」はもはや机上の議論ではなく、派遣自衛隊員の命に関わる深刻な問題となっている。

     丹羽宇一郎  
     (丹羽宇一郎・元伊藤忠商事社長)

 ・ 伊藤忠商事の丹羽宇一郎・前会長は「安保法の成立で各地で違憲訴訟が続発して混乱するのではないか。政治に波風が立つことは、経済界としてもやりにくくなり喜ぶべきことではない。誰が見ても戦争に近づく法律で、個人的にも反対だ」と語っている。
  実際に昨年4月、「安保法制違憲訴訟の会」が立ち上げられ、現在14地裁に提訴されているようだ。
   国会の中では自・公など与党が議席三分の二を占めているが、こうした相次ぐ訴訟と国民世論の力で「安保法制」を葬ることは可能だと考える。とくに、被爆地長崎から提訴されたことの意義は大きい。
   訴訟に直接加入していない市民の皆さん方に訴えて、訴訟勝利の世論を広げていきたいと思う。

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       (砂川闘争、1955年頃)

――裁判所に希望すること、訴えたいこと
 ・ 戦後、「長沼裁判」や「砂川事件」の例が示すように、日米安保に関わる訴訟では政権側からの圧力がすさまじく、裁判所は憲法判断を忌避してきた。
   現在、安倍政権下で報道機関へ露骨な圧力が加えられているのは、周知の事実だ。今回訴訟の対象となった「安保法制」に関しては、元内閣法制局長官や最高裁判事などが「憲法違反」だと明確に指摘している事案である。当裁判所におかれては、あらゆる圧力に屈することなく公平・公正な判断を示していただくように、心より切に願う。
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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)