脱原発の論理~故・藤田祐幸氏を偲ぶ

 鹿児島県の知事選挙で、川内原発容認の現職に挑んだ候補が予測を裏切って勝利し、  〝脱原発〟知事が誕生した。
 この現実は、九電だけでなく政府や電力会社に大きな影響を与えていくことだろう。
 そこで今回は、原発容認派と反対派の代表格の論理を検証してみることにした。引用するのはいずれも、月刊「世界」(13年)への論考である。少々長くなるが、ご勘弁願いたい。

     16.8.27朝日・川内原発停止、知事が要請 - コピー
     (瓜生道明・九電社長に要請書を手渡す三反園訓・鹿児島県知事)

 <寺島実郎の原発論>

*菅直人・元首相から手紙が届いた。「新自由主義の拒否と脱原発を結束軸に活動を続ける」という内容で、市民派政治家の限界を知らされるものだった。

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     (寺島実郎・日本総合研究所所長)

*世界のエネルギー地政学は地殻変動の局面にある。まず、石炭需要の急増である。次に、米国のシェールガス・オイル革命が新局面に入り、中東依存からの脱却という構造が見えてきた。
*世界の原子力の動向も新たな局面にある。IEAの展望では、原子力発電は35年には580基で10年の394基の5割増とみられ、「国際的核管理と安全の制御」が課題となっている。

     16.4.26朝日・主な国の原発

  さらに、中国は14基から80基へ、韓国も24基から36基を目指しており、100基以上の原発が北東アジアに林立するだろう。
その中で、日本が専門性の高い技術基盤を保有して主導的役割を果たせるかが重要だ。
*「脱原発」の論理を整理しておく。第一に、原子力は安全性を保障できない制御不能な技術である。第二は、原子力は等身大の技術ではなく「反倫理的」である。
  抱え込んだ原子力という魔物を制御できるシナリオはないのかという視座が必要だ。だが、「脱原発」の論理には、感情の次元を超えた政策科学の議論が欠けている。
*不可欠な二つの視点。一つは、原子力の技術基盤を維持し、発言力、貢献基盤を失うな。
  二つは、技術の進化への的確な認識である。第一世代の福島原発と異なり、2.5世代からの原発は着実に安全設計が進化している。
*「国家が責任を持つ」制度と組織が肝要だ。二つの提案をしたい。
  一つは、すべての電力会社から原子力事業を切り離し、「原子力統合会社」として一体運営すべきだ。
  第二は、国家としての原子力行政体制を統合することだ。
*この7年間で、原子力産業の位相はすっかり転換した。東芝はWHを買収し、日立とGEは合弁事業を設立、「日米原子力共同体」というべき構造が形成されている。アレバと提携する三菱や世界の原子炉格納容器の圧倒的シェアを持つ日本製鋼所など、日本企業が原子力産業の中核主体になっている。
*果たして、日米同盟を解消することなく、「脱原発」は不可能である。
 であれば、日本の原子力技術基盤を生かして影響力を最大化し、「非核のための原子力」へ向けて前進すべし。
――(月刊「世界」13年12月号より)

<藤田祐幸の脱原発論>

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     (藤田祐幸・元慶応大学助教授)

*福島原発事故で熔けおちた原子炉の底を流れた地下水が、毎日300トンも海へ流れ出していた事実を東電が認めた。私はその水量に圧倒された。
*地下に遮水壁を建設したところで、山から流れる地下水を止めることはできず、行き場を失った汚染地下水は地上に溢れ出てしまうだけ。
  地下に溶け落ちた炉心の放射能は100年や1000年経ってみても、とうてい人の手に負えるものではない。
*11年11月、「阿武隈川から海へ500億ベクレル」という記事が新聞に載った。この放射能は原発の地下水汚染とは別の重大問題をはらんでいる。

     汚染水があふれた状況

  環境省が13年6月に汚染状況重点調査地域の地図を公表した。市町村ごとの空間線量(毎時0.23マイクロシーベルト)は一般人の被曝限度の二倍の被曝を強いられる地域だ。
山林の汚染された土壌は、川底に堆積しあるいは河口部の海底に沈積する。日本の国土の70%以上は山林であり、この山林の腐食土壌に沈着した放射能を除去することなどあり得ない。
*福島原発事故では、二つの幸運が日本を破局から救った。同原発が日本列島の東側に位置しており、辛うじて原子炉の蓋が吹き飛ばずに済んだため、膨大な放射能の大部分は太平洋に流れて、深刻な汚染は北関東から南東北の一部にとどまった。
しかし、原子炉の底が抜けたことで、事態はいっそう深刻だ。核燃料は本来、10万年の間、環境から隔離すべきもの、つまり水との接触を断ち切るということだ。
まさに「海のチェルノブイリ」ともいうべき事態が、今も深刻に進行している。
*政府は、使用済み核燃料を10万年間、環境から隔離するとしているが、その技術と安全性について検証のしようがないのが現実だ。
  地球は1万年ほど前に氷河期が終わり、温暖化の時代が始まって、今の私たちがいる。福島で起こったことはこの1万年の歴史に対する冒涜ではなかったか。
  目先の利害にとらわれることなく、未来に対する判断をすることこそが、今求められているのではないか。
――(月刊「世界」13年10月号より)

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     (福島第一原発)

 寺島氏の論理は、こうだろう。――原発技術は進化しており、世界の原発は増えていく。原子力産業は「日米原子力共同体」というべき構造が形成され、日本が中核主体になっている。日本の原子力技術基盤を生かして影響力を駆使すべきだ。
 福島原発事故の原因を、安全設計に欠けた「第一世代」に求めているのには、驚かされる。「脱原発」派への反感が顕著で、「政策科学の議論」とはとても言えない。
 加藤周一氏に次ぐ〝知の宝庫〟と称される寺島氏だが、政府に取り込まれるとこのザマかという思いだ。もっとも、彼のバックが三井資本だから所詮限界があるのかも知れない。
 一方、藤田氏の論理は、何よりも「現場検証」に基づいており、説得力充分だと思う。
 福島とその周辺の状況は、土壌や川も海も放射能で汚染されて手の施しようがない。原発の汚染水対策もままならず、海に放出されているのが現状だ。(その後、「凍土壁」を造ってみたが上手くいかない)
 私は、イラク特別委員会で参考人として出席された藤田氏と質疑を交わした思い出がある。またその後、西海市(長崎県)に移り住まれて、何度かお宅を訪ねたこともある。
だからといって、身びいきで両者を評価している訳ではない。

 藤田氏は、残念ながら7月18日ガンで亡くなられた。享年73歳、あまりにも早すぎる最後であった。
 その意思をしっかり受け継いで、「脱原発」を目指して前進したいと思う。
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生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)