池孝晃が語る~永遠平和と安保法

  先月29日、戦後の安全保障政策を転換する「安保法」が施行された。敗戦を告げる玉音放送から70年7か月。

  月刊「PLAYBOY」日本版といえば、ヌード写真だけでなく政治・社会など硬派記事を同時掲載する雑誌として有名だった。その編集長を務めた(78~82年)池孝晃さんが9年前に18世紀ドイツの哲学者・カントの名著「永遠平和のために」の新訳本を世に送り、このたび朝日新聞のインタビューで語ったことに耳を傾けてみたい。

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――「安保法」が施行されます。カントは何と言うでしょう。
  平和への歩みは遅々としているけれども、いつか永遠の平和が実現するのを期待して歩むことが大事なんだ、と言っています。
  人類の歴史は戦争の歴史だからこそ戦争のない社会を、と理想を掲げたんですね。
共通の敵でもない別の国を攻撃するために軍隊を他国に貸すことがあってはならない、とも言っています。まさに集団的自衛権のことでしょう。

    カント『永遠平和のために』

――戦後日本の安保政策の転換点になります。
  この70年あまり、僕たちの国は一度も戦争をしなかった。カントが照らした道を世界で最も忠実にたどったのは戦後の日本でしょう。転換点を迎える今、思い浮かぶのはカントのこんな一節です。
  『たまには、老哲学者の言葉に耳を傾けてはどうか』

――この本を編もうと思い立ったのはどうしてですか。
  03年3月、米国のイラク爆撃の様子をテレビで見ました。映像がすごくリアルで、それはもう驚きでした。あの爆撃の下には普通の人々が暮らしており、身がすくむ思いでした。
  幼い頃の戦争体験の記憶がいっぱいある。戦争が普通の人々の生活や人生を大きく変えるということは、やはり覚えておかねばなりません。

    池孝晃氏
    (池孝晃氏)

――そんな経験を……。
  戦争というのは、体験するのとそうでないのとでは全然、違うんですね。
60年安保の時、僕は大学生でしたが、運動に参加した同世代も多かれ少なかれ、戦争を体験していました。
  しかし、70年安保の中心になったのは戦後生まれの団塊の世代です。当時、『戦争を知らない子供たち』という曲がヒットしました。
  まさに戦争を知らない若者たちの一部が、72年に連合赤軍のあさま山荘事件を起こしました。警察が鉄球で建物を壊す場面で、テレビ局がサイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』を流していたのを覚えています。
 こんな闘いの先に、どんな夢や希望があるのか、僕にはさっぱり理解できなかった。

    杉田二郎
    (杉田二郎)
   
――その後、創刊に関わった月刊「PLAYBOY」日本版の読者は「戦争を知らない」若者たちだったのでしょう。
  米国版の翻訳とオリジナルの記事で編集しました。
 白人女性のヌードグラビアが話題になりましたが、藤原新也さんら若手写真家によるアジアやアフリカの写真紀行、三島由紀夫に関するスクープ記事など政治や社会、文化まで硬派な記事を並べました。
エロからサルトルまで、です。
  じつは、日本で若者が立ち上がる日は、もう来ないだろうと思っていました。権力に敗れた若い人たちに、世界へ飛び出して目を開いてほしかったのです。
  75年5月21日に発売された創刊号は、45万8千部がその日の午前中に売り切れました。

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    (サイモン&ガーファンクル)  

――エロと哲学。まさに雑誌という感じがします。
  ところが、80年代に入ると、若い人たちは自分の半径3メートルにしか関心を向けなくなった。政治的闘争なんて、どこにもないのですから、当然カモしれません。
  ファッション誌やサブカルチャー誌が好まれ、若者は政治や社会を語ることを退屈だと考えるようになったようです。

――しかし、と。
  僕が好きなことをしている間に、戦後生まれが7割を超え、戦争体験を持つ政治家も次々に政界を去っていった。
 自衛隊もイラクに派遣され、長く戦争とは無縁だった日本がそうもいかない感じになってきた。
 編集者人生の最後の1冊で若い人たちに何かを残したい。そう思った時、手に取ったのがカントの『永遠平和のために』でした。   日本の憲法がその精神を受け継いでいる、と聞いたからです。

――自信作ですね。
  06年に安倍さんが首相になって、憲法改正を堂々と唱えた。戦後生まれの政治家の言葉に、頭を殴られたような気がしました。
 カントを早く出したい。刷り上がったのが07年11月、ちょうど定年退職の日です。
 安倍さんは出版の2カ月前に退陣していましたが。

――返り咲いた安倍首相は、29日に施行される安保法が平和をもたらす、と訴えます。
  カントは行動派の政治家の特徴として『まず実行、そののちに正当化』『過ちとわかれば、自己責任を否定』と述べています。
また『力でもって先んじなければ、力でもって先んじられる』という指摘にもハッとさせられます。他国への侵略に絡んでの指摘なので安倍さんとは前提が違いますが、力でという発想は重なるようにも見えます。
  しかも、こうした主張を受け入れる国民が少なくない。多くの人にとって、僕が体験した戦争はもう、遠い出来事になっているのでしょう。

    哲学者カント
    (カント)

――夏の参院選では、18歳が選挙権を持ちます。戦争どころか、バブル景気も知らない世代です。
  18歳は、憲法改正の国民投票もできますね。だからこそ、自分の考えを持って政治に参加してほしい。
 今の日本は、200年前、遠い欧州の哲学者が唱えた『永遠平和のために』という呼びかけに応えているか。
 自身で考え続けてほしいのです。

  あらためて、カントの『永遠平和のために』を読み返してみたいと思う。


(※ my8686さんのブログも参考にさせていただきました。)
  <池 孝晃> 1939年生まれ。62年集英社入社。78~82年まで『PLAIBOY』日本版編集長。文芸出版部取締役を経て、綜合者(当時)社長。2007年退職。
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生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)