池澤夏樹の批評「地下の水銀、地上の放射能」を読む

 池澤夏樹という作家・詩人の批評が興味深くて、毎月、朝日新聞のコラム「終わりと始まり」を読んでいる。彼は、北海道・帯広出身で芥川賞をはじめ13ものあらゆる賞を受賞している。
 今月11日付では「地下水の水銀、地上の放射能」と題して、水俣病と福島原発事故のことを批評しているが、物理学を専攻しただけあって実に明快だ。今回は、長文になるがその批評ぶりを要約してみる。

        水俣の位置関係

――不知火海(八代海)を一周してみた。海峡が狭くて、うまく閉じられた海なのだ。奥の方では干満の差が4㍍あり、海岸には干潟が広がっていて、稚魚が育って浅い海に出て大きくなる。「魚の湧く海」という言葉が納得できた。

――水俣湾は不知火海の一部で、かつてチッソはここに「70㌧ないし150㌧、またはそれ以上ともいわれ」る水銀を放出した(なんといいかげんな数字か)。
 約20年後に水銀を含むヘドロは湾の底から回収され、「14年の歳月と485億円をかけて」護岸の内部に埋められた。これが本当に最善の策だったのだろうか?今も薄い土の被覆の下に151万立方㍍の水銀を含有するヘドロがある。海との距離は100㍍と少し。

       水俣病の展示
        (水俣病や水銀研究に関する資料展示)

――南九州は活火山の巣だ。火山と地震と津波が予測不能なのはこの数年で我々が痛苦と共に知ったところだ。御嶽山の噴火はいきなりだったし、漏れるという言葉はフクシマでさんざん聞いている。

――有機水銀は合成化学工業の産物であり、無毒な金属水銀に還元できる。専用のプラントを現地に造ればいいだけの話。そもそも毒性のある産業廃棄物を産めるだけで処理済みとするのは廃棄物処理法ならびに去年採択された「水銀に関する水俣条約」の精神に反するのではないか。
 長らく水俣病に関わってきた人から聞いた話では、有機水銀の回収プラントを設計して試作までした技術者がいたが、彼のプランは一顧だにされなかったという。

      汚染土の仮置き場
         (汚染土の仮置き場)

――この9月1日、福島県は原発事故で生じた放射能を帯びた汚染土を大熊町と双葉町に集め、中間貯蔵施設の建設を受け入れると決めた。「しばらくの間」とは最長30年。そこに2200万立方㍍の汚染土が搬入される。
 水銀と違って放射能は化学的に始末できない。人体に有毒な放射線をいつまでも出し続ける。

      中間貯蔵施設
         
――福島第一原発に隣接する港湾では、海底にたまった放射性の「浮泥」が外洋に流出するのを防ぐために上からセメントで覆う工事が始まる。手法は水俣とよく似ている。
――再稼働がとりざたされている九電川内原発は桜島から50㌔のところにある。政府は「桜島の破局的噴火は9万年ごとだが、前回は3万年前なのでまだ大丈夫」と言っているが、これは火山学の学界では通用しない粗雑な論らしい。
 リスクをコストと読み替えれば、今のようなやりかたで「繁栄」を維持するコストは我々に知らされているよりもずっと大きい。

      14.9.3朝日・海底覆土へ工事 - コピー

 「水俣病」は世界でも知られた深刻な被害であったが、福島原発事故はそれをはるかに超える被害を生み出し、今後何万年もの間人間を脅かし続けるのだ。
 汚染水・汚染土対策ひとつままならず、大事故の原因究明もできない中で、安倍政権や電力会社は再稼働ありきで突き進んでいるのが現状だ。あらためて心の底から憤りがこみ上げてくる。
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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)