増税時代と欧州モデル

 「スウェーデン・モデル」という言葉に接したのは、およそ14年ほど前、朝日新聞に載った神野直彦・東大教授(当時)の論考「絶望から希望の島へ」だった。とても分かり易く、衆院選挙の訴えでも使わせていただいた。

 今頃思い出したのは、来月から消費税が8%に上がることに関して、朝日新聞のインタビュー欄に「増税時代」と題する井出英策・慶応大教授の話が出ていたからだ(3月14日)。以下、その要点を紹介してみる。――

井出英策 日本財政・転換の指針
 (井出英策・慶応大教授)

*日本の租税負担率(国民所得に対する税収の割合)は、先進国の中で最も低い部類で、小さな政府です。
*危機的な財政状況にはあるが、ムダをなくせば財政が再建されるという単純な議論は、財務省主計局流の論理が強すぎ問題です。
*本来なら、(欧州のように)もっと早くから段階的に増税し、それにあわせて社会福祉を充実させるべきでした。できなかった理由は、日本のかつての利益分配メカニズム(農村部に公共事業、都市部に減税の組み合わせ)にあります。

*何がムダかというのは民主主義が決めることであって、経済的な損得勘定だけでは語れません。『土建国家』は、仕事を与えて生活を自立させるという意味で日本型福祉国家でもあったのです。
*それができたのは、高度成長で自然増収があったからで、問題は、低成長時代に入っても、これに代わる仕組みをつくれなかったことにあります。

    高福祉・高負担

*年金のGDP比率という指標を見ると、北欧のスウェーデンと変わりません。しかし、支出(医療費や介護費など)も合わせて考えると、日本の高齢者は決して恵まれているとはいえません。
*日本の社会保障予算は、分断されているのが問題です。私は、あらゆる人を受益者にするユニバーサルサービスの実現を唱えています。欧州の多くの国では、大学は無料だし、医療も無料ないし限りなく無料に近い。北欧にいたっては年金だってみんなもらえる。『貧しい人を助けることが自分の利益につながる仕組み』。これが欧州型の福祉国家です。

   国会議員に占める女性の割合

*(スウェーデンは競争重視社会で、企業の解雇も比較的容易だが)雇用の流動性を高めるのは重要ですが、政府が解雇された人々の雇用を保障する責任を負うことも必要です。
*まだ無理がきくいま、多少借金してでも投資すべき分野はあります。借金を返す一番の近道は人間に投資することです。欧州では職業訓練が国際競争力を強めるための柱になっています。日本の技術や労働者の質が高まれば、海外から企業が来ます。建設国債の使い道も人間の投資に広げるべきです。

   就業支援&失業手当

 さて、安倍政権は消費増税の理由を、財政再建や高齢化社会への対応を挙げる。しかし、来年度10%になっても、上げ幅5%のうち生活の充実に使われるのは1%分に過ぎない。政治不信を募らせる国民が納得するはずもなく、政治家たちは「当落」を気にして増税に後ろ向きだ。
 そうした中で、井出教授の唱える構想は現実的で検討に値すると思うのだけど、如何だろうか。
(※挿入したグラフなどは、週刊「東洋経済」2008年1月12日号からの引用でかなり古いことをお断りしておく。
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生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)