
「武器輸出三原則」は他国にない財産だ
左手に「紛争防止」の旗を掲げながら、右手で「武器輸出」への扉をこじ開ける。――武器輸出に最も厳しかった日本までが、こんな矛盾したことをやっている。
冷戦終結から20年余、世界各地で民族紛争は後を絶たない。その原因は、領土・資源を巡る争いなど様々だが、「武器」がなければ争いようがなく、凄惨な結果を招かずにすむ。「9.11米国同時テロ」以降は、アルカイダなど多様なテロ組織との戦いが加わった。

(朝日新聞 2013年5月21日付)
武器の主な供給国は欧米・ロシア・中国で上位を占める、❝ワースト3❞は米・ロ・中だ。武器貿易市場は年間850億ドル(約8.5兆円)と言われる。湾岸戦争後、アラブ首長国連邦(UAE)では隔年で「武器の見本市」が開かれ、各国の軍需企業が多数参加している。

( ※ ちなみに世界の軍事費は、年間1兆6245億ドル(約129兆9600億円)にものぼり、トップの米国
が689億ドル(55兆1千億円)で全体の4割強を占める。中国の増強ぶりが顕著で第2位( 129億ド
ル、10兆3千億円)、日本は545億ドル(4兆3千億円)で第6位(英・国際平和研究所「SIPRI年鑑」
による。2011年度実績)。もっとも、武器等の研究開発費や軍人恩給の扱いなど各国で異なり、
軍事費の単純比較は難しい。)
新技術の開発により武器の殺傷力は飛躍的に高まり、最大の被害者は軍人より「非戦闘員」となった。核兵器や化学・生物兵器は「大量破壊兵器」として使用禁止条約が一応ある。通常兵器についても過剰かつ無差別殺傷を防ぐとして「特定通常兵器使用禁止制限条約」がある。
また、「非人道的兵器」の使用禁止を求めて、NGOの主導で「対人地雷」(97年)「クラスター爆弾」(08年)の使用禁止条約が成立した。

(対人地雷)

こうした❝武器使用禁止❞の流れの中、今年4月、武器の国際取引を規制する初の包括的ルール「武器貿易条約」(ATT)が成立した。軍縮NGOの他に北欧、アフリカ、中南米の国々が積極的に働いた。国連総会の採決では、154か国が賛成したが、肝心のロシアと中国は棄権、北朝鮮・イラン・シリアが反対した。

(朝日新聞 2013年4月4日付)
日本は、戦後間もなく「外為法」と「輸出貿易管理令」によって武器輸出を制限してきた。首相が、武器輸出の判断基準を国会で答弁した(67年・佐藤首相、76年・三木首相)ことから、「武器輸出三原則」として定着した。――武器輸出禁止の対象国は➀共産圏➁国連決議で禁止されている国➂国際紛争の当事国やおそれのある国、とされた。三木内閣では、これ以外の国への輸出も原則禁止とした。
この三原則は、「非核三原則」(67年)とともに憲法第九条を具現化するものと位置づけられ、「国是」として扱われてきた。

しかし、中曽根内閣が「米国への武器技術供与」を三原則の例外として認め(83年)、小泉内閣が米国と共同でミサイル防衛(MD)の技術開発・生産を認めた(04年)。
その後、政権交代した民主党・野田内閣のもとで国際共同開発・生産」について包括的に例外扱いとし、三原則は大幅に緩和された(11年)。
復権した安倍内閣はこの度、最新鋭戦闘機F35の国際共同生産に参加を決め、三原則の理念も「国際紛争の助長回避」から「国連憲章の遵守」へと変更した。「武器輸出三原則」の骨抜きである。

(朝日新聞 2013年3月2日付)
❝死の商人❞の仲間入りなんて、まっぴらごめんだ。紛争の予防と解決に、平和国家・日本ならではの貢献の方法があるのは、いくつもの実例が示している。だからこそ「武器輸出三原則」はしっかり堅持すべき財産なのだ。
冷戦終結から20年余、世界各地で民族紛争は後を絶たない。その原因は、領土・資源を巡る争いなど様々だが、「武器」がなければ争いようがなく、凄惨な結果を招かずにすむ。「9.11米国同時テロ」以降は、アルカイダなど多様なテロ組織との戦いが加わった。

(朝日新聞 2013年5月21日付)
武器の主な供給国は欧米・ロシア・中国で上位を占める、❝ワースト3❞は米・ロ・中だ。武器貿易市場は年間850億ドル(約8.5兆円)と言われる。湾岸戦争後、アラブ首長国連邦(UAE)では隔年で「武器の見本市」が開かれ、各国の軍需企業が多数参加している。

( ※ ちなみに世界の軍事費は、年間1兆6245億ドル(約129兆9600億円)にものぼり、トップの米国
が689億ドル(55兆1千億円)で全体の4割強を占める。中国の増強ぶりが顕著で第2位( 129億ド
ル、10兆3千億円)、日本は545億ドル(4兆3千億円)で第6位(英・国際平和研究所「SIPRI年鑑」
による。2011年度実績)。もっとも、武器等の研究開発費や軍人恩給の扱いなど各国で異なり、
軍事費の単純比較は難しい。)
新技術の開発により武器の殺傷力は飛躍的に高まり、最大の被害者は軍人より「非戦闘員」となった。核兵器や化学・生物兵器は「大量破壊兵器」として使用禁止条約が一応ある。通常兵器についても過剰かつ無差別殺傷を防ぐとして「特定通常兵器使用禁止制限条約」がある。
また、「非人道的兵器」の使用禁止を求めて、NGOの主導で「対人地雷」(97年)「クラスター爆弾」(08年)の使用禁止条約が成立した。

(対人地雷)

こうした❝武器使用禁止❞の流れの中、今年4月、武器の国際取引を規制する初の包括的ルール「武器貿易条約」(ATT)が成立した。軍縮NGOの他に北欧、アフリカ、中南米の国々が積極的に働いた。国連総会の採決では、154か国が賛成したが、肝心のロシアと中国は棄権、北朝鮮・イラン・シリアが反対した。

(朝日新聞 2013年4月4日付)
日本は、戦後間もなく「外為法」と「輸出貿易管理令」によって武器輸出を制限してきた。首相が、武器輸出の判断基準を国会で答弁した(67年・佐藤首相、76年・三木首相)ことから、「武器輸出三原則」として定着した。――武器輸出禁止の対象国は➀共産圏➁国連決議で禁止されている国➂国際紛争の当事国やおそれのある国、とされた。三木内閣では、これ以外の国への輸出も原則禁止とした。
この三原則は、「非核三原則」(67年)とともに憲法第九条を具現化するものと位置づけられ、「国是」として扱われてきた。

しかし、中曽根内閣が「米国への武器技術供与」を三原則の例外として認め(83年)、小泉内閣が米国と共同でミサイル防衛(MD)の技術開発・生産を認めた(04年)。
その後、政権交代した民主党・野田内閣のもとで国際共同開発・生産」について包括的に例外扱いとし、三原則は大幅に緩和された(11年)。
復権した安倍内閣はこの度、最新鋭戦闘機F35の国際共同生産に参加を決め、三原則の理念も「国際紛争の助長回避」から「国連憲章の遵守」へと変更した。「武器輸出三原則」の骨抜きである。

(朝日新聞 2013年3月2日付)
❝死の商人❞の仲間入りなんて、まっぴらごめんだ。紛争の予防と解決に、平和国家・日本ならではの貢献の方法があるのは、いくつもの実例が示している。だからこそ「武器輸出三原則」はしっかり堅持すべき財産なのだ。
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