防衛大で酷い〝人権侵害〟ーー支援体制をつくり勝訴へ!

エリート自衛官を養成する防衛大学校で、人権侵害行為が組織的に行われ常態化していた。俄かには信じがたい現実だ。

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    (福岡高裁・地裁)

 一昨日、福岡地裁で「防衛大学校・人権侵害裁判」の第1回公判が開かれたので、傍聴と今後の支援に関する話し合いに行ってきた。
 事件の概要は、「訴状の概要」によると以下のとおりだ。

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    (訓練の光景)

―― 原告の防衛大の元学生Aさんは、2013年4月の入校式直後より、指導という名のもとに数々の傷害、暴行を受けた。
 13年6月から14年5月にかけて、原告に暴力行為を働いた被告B(上級生)は罰金20万円、被告C(上級生)は同10万円、被告D(上級生)は同10万円の略式命令に処せられた。
 教官は、これら一連の暴力行為を認識していながら、原告を救済せず、人権侵害行為の発生を予防する対策を怠った。

―― また、同学年の被告2人からも指導という名のもとに数々の暴行を受け、上級生と同様の対応を強要された。
 さらに、別の被告E(上級生)からはロッカー内をめちゃくちゃにされるなどの執拗な「いじめ」を受けた。
 また、暴力行為だけでなく、同じ中隊の2年生・被告F及びGからは、原告の写真を無断で「遺影」に改変してLINE上に公開されて精神的ダメージを受けた。

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    (卒業式で訓示) 

―― 原告は、カウンセラー、教官に相談したが限界となり、14年8月から15年4月まで休学を余儀なくされ、15年3月に退学するに及んだ。

 原告の「意見陳述書」(16.5.23)によると、入校式の日に出席することなく迎えにきた家族と帰っていく学生が80人ほどもいたという。せっかく合格したのに入校式の日に大学を去るというのは、尋常ではない。
 防衛大といえば、いまも競争率の高い〝狭き門〟だ。入校すると「特別職国家公務員」の身分となり、学費と衣食住費用は国費負担で、毎月約11万円の手当と賞与約38万円を受け取れる。
毎年480人が入校し、卒業者は350~400人で、「任官拒否者」が増えているという。

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    (開校記念祭)

 原告は、「他の部屋では目も耳も覆うような出来事があり、私はその人たちの思いも込めて裁判に臨む」と述べている。
 訴状によると、本裁判では、加害学生(8人)に対する不法行為責任だけでなく、防衛大(国)の安全配慮義務違反による損害賠償(約2297万円)を求める、としている。
 また、防衛大では「学生間指導」を制度として導入しており、その運用における注意を怠ったという「組織的な責任」を根拠づけるものであることを明らかにしたいと述べている。
 
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    (「たちかぜ」裁判、東京高裁で勝訴判決。2014年)

 護衛艦「さわぎり」裁判勝訴から8年、護衛艦「たちかぜ」裁判勝訴から2年、この15年の間に自衛官の人権侵害裁判は全国各地に広がり、原告側の勝訴が相次いだ。
 防衛省・自衛隊はその都度、謝罪して「再発防止」を誓ったはずである。幹部や隊員らのメンタルヘルス教育にも力を入れてきた。
 しかし、陸・海・空自衛隊及び防衛大における「人権侵害」の根は深く、構造的な問題として浮かび上がっている。
 すでに今年3月「安保法」が施行され、参院選後、自衛隊の海外での「武力行使」に道が開かれる。これまで以上に自衛官の人権侵害が多発・深刻化しないか憂慮される。

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    (支援体制を話し合う弁護士や支援者)

 まずは、九州各県の平和フォーラムや平和運動センター、社民党などが中心になって支援する体制をしっかり作りたい。それを基点にして、すでに結成されている弁護団ネットワークや「家族会」などと連携して全国的な支援の輪を広げ、世論を喚起していきたいものだ。
 (※なお、原告は退学後別の大学で学んでおり、生活などに影響が及ばないように、名前は匿名にしています。)
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書評「帰還兵はなぜ自殺するのか」と戦闘ストレス障害

 先日、「帰還兵はなぜ自殺するのか」という書籍の書評が目にとまった。
 私が、自衛官の人権問題に取り組んでからすでに15年になる。その関係もあって、アフガン戦争やイラク戦争での死傷者数、自殺数やPTSDなどの問題を探ってきた。

   帰還兵はなぜ自殺するのか

 同書の評者・保阪正康氏によると――アフガンとイラクに派兵された米軍兵士は約200万人、そのうち50万人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に悩まされており、毎年240人以上が自殺している。

 同書の著者はワシントンポスト紙の元記者であるデイヴィッド・フィンケル氏で、こうした戦闘ストレスに悩む元兵士たち、その家族、さらにはペンタゴン(米国防総省)の自殺防止会議の調査報告にふれながら、この悲劇の実態はどのようなものか、具体的に鮮烈に記述してその苦悩を現代社会に正確に伝えようとしている、と評している。

   死者数と戦費2

 国会図書館の刊行物「レファレンス」に、鈴木滋氏が「メンタルヘルスをめぐる米軍の現状と課題~『戦闘ストレス障害』の問題を中心に」(2009年8月)及び「防衛省・自衛隊のメンタルヘルス対策~米軍の事例紹介を交えつつ」(2015年1月)と題して詳しく論じている。
 また、昨年のNHKドキュメント現代「イラク派遣 10年の真実」でも、帰還自衛官の自殺やPTSDなどを分かり易く報道している。

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   (NHKドキュメント現代「イラク派遣 10年の真実」)

 国会では、照屋寛徳衆議院議員(社民党)が「イラク帰還自衛隊員の自殺」について質問主意書で問い質し、政府は「答弁書」(07年11月13日)で次のように答えている。――「テロ特措法」に基づき、延べ約1万900人の海自隊員を、また「イラク特措法」に基づき陸・海・空自合わせて延べ約8800人。そのうち自殺者は陸自1人、海自8人、空自1人。派遣と隊員の死亡との関係については、一概に言えない。退職後の精神疾患については把握していない。
 前述のNHK報道では、自殺者は28人に増えている。

   海兵隊との共同訓練

 米国では、年間約3万人の自殺者のうち帰還兵が約25%を占めているという。日本でも、安倍政権の思惑どおりに「安保法制」が成立したら、自衛隊は米軍と共に戦闘行動をすることになり、〝帰還兵の心〟の問題は自衛隊員にも降りかかってくる問題である。

学校や自衛隊に横行する〝暴力的指導〟

 学校での「体罰」が社会問題となった頃の記事を思いだした。
慶応大の片山杜秀准教授が「軍隊での暴力的指導は日露戦争を転機としている。日本は人口も武器弾薬も工業生産力も足りない。結局、期待されたのは『精神力』だ。…戦後、自衛隊に暴力的指導の伝統は残存した」と指摘している。

 また、作家の丸谷才一さんは朝日新聞のコラム「袖のボタン」で、「半藤一利さんの話によると、日本海軍の軍艦が5隻も爆沈している。精神科医の中井久夫さんによると、その半数は制裁のひどさに対する水兵の道連れ自殺という噂が絶えない」と書いている。

   13.2.19朝日・軍隊の精神論
   (朝日)新聞13年2月19日付

 先月の朝日新聞(2月17日付)で、坂上康博・一橋大学教授が「規律重視は兵士養成のなごり」という話をされている。その要旨を紹介してみたい。
 ――日本の体育の起源は幕末にさかのぼり、明治以降は軍隊で行われた。学校教育にも体育が導入された。欧米に比べて体格が劣るので、「強兵」をつくるため男子の体格・体力の向上が必須と考えられた。
 ――戦前の学校体育の科目名は「体操科」で、集団行動や規律の訓練にもなるので、軍事的な価値を持つようになる。やがて、軍隊式の集団訓練が入ってきて「軍事教練」と呼ばれ、陸軍将校が配属される。
 体操や軍事教練に対し、スポーツや武道は遊戯という扱いだったが、共産主義思想に影響される学生が増えると、対応策としてスポーツを思想教導の手段と見なすようになる。

   坂上康博さん
   (坂上康博・一橋大学教授)

――戦後、軍事教練や武道必修は廃止されたが、兵士養成のために重視された集団性や規律は、民主的な社会形成に必要だとして生き残った。
注目すべきことは、特に部活で精神主義や暴力的な指導が目立つようになった。戦前の遺物というより、戦後になって一般的になったものだ。軍隊経験をもつ指導者が、短期間で強くするために軍隊のやり方を部活に応用した。
根性主義も戦後の産物で、60年代とりわけ東京五輪前後からだ。

   学校軍事教練

――日本人のスポーツ観が集団主義的、根性主義的だというのも一面的だ。スポーツは本来、強制されるのではなく自発的に行うべきものだ。日本では、学校を卒業して初めて本来のスポーツのあり方を楽しむようになるという特殊な状況が続いてきた。
海外ではスポーツは文化となったが、日本ではそうなっていないと言われるゆえんだ。

学校での「体罰」や自衛隊での「いじめ」が横行する現実を、あらためて深く考えさせられた思いだ。

自衛隊員の訓練事故死は深刻だ

 東京新聞(7/6付)に「自衛隊員の訓練中の死亡事故」に関する記事が載っていた。
 照屋寛徳衆議院議員(社民党)が質問主意書で質し、政府が答弁書で明らかにした。

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 答弁書によると、04年度以降今年5月までに62件発生(陸自47・海9件・空自6件)。同時期で警察官は9件、消防士は04~12年度で10件。「事故率」を比較すると10万人当たりの死亡事故は、自衛隊員2.28件で警察官(0.32件)の7.1倍、消防士(0.69件)の3.3倍である。

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          (朝日新聞 2013年2月19日付)

 元自衛官で自衛官人権ホットラインを開設している小西誠氏は、「持久走中の脂肪事故が頻発しているのは、基本的な救命措置が十分でない。現場の指揮官に医学的な知識が不足している」「現場は根性論で、肉体の限界を度外視した訓練が行われやすい」と話している。

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          (訓練水槽を視察する阿部知子・衆院議員。ブログより)

 また、海自潜水医学実験隊(横須賀市)の男性隊員2人が5月に訓練の準備で死亡した事故を受け、訓練施設を視察した安部知子衆議院議員(無所属・比例南関東)は、「訓練中の事故は仕方ないというのは命を軽んじている」「部隊内の調査は第三者性が極めて薄い。自衛隊の自浄作用と第三者のチェックが必要では」と主張している。

 先日の閉会中審査(衆・参予算委)で、「集団的自衛権の行使」容認により想定される自衛隊員の「死亡」について野党から問い質された安倍首相は「そういう事態は想定していない」と素っ気なかった。自衛隊の深刻な現場を顧みることもなく、海外での武力行使を振りかざす政権はこの上なく危うい。解散・総選挙で国民の信を問うべきであろう。

「たちかぜ」控訴審は、全面勝訴だった!

 4月23日、退院後初めて上京した。目的は、護衛艦「たちかぜ」控訴審判決を傍聴するためだった。午前10時過ぎ、東京高裁玄関前はマスコミの報道陣であふれ、傍聴希望者の長い列ができた。

午前11時、鈴木健太裁判長は、「たちかぜ」の乗組員Tさん(一等海士)の自殺は、➀上官(二等海曹)の執拗な暴行・恐喝が原因である➁上司らが適切に対処すれば自殺は回避できた(自殺の予見は可能であった)と認定し、国などに約7350万円の支払いを命じた。

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 また、海自は、全乗組員にいじめの有無を尋ねたアンケートを実施。遺族は、アンケート原本の開示を求めたが、海自は「破棄した」として拒否していた。ところが、現役の三等海佐が控訴審で「隠されている」と内部告発し、海幕はこれを認めて謝罪した。判決では、意図的な隠ぺいだったとして「裁判の判断に影響を及ぼす重要な証拠だった」と指摘して、別途20万円の損害賠償を命じた。
ところが防衛省は、「文書のコピーを外部に持ち出した」との理由で、内部告発した三佐の処分を検討している。本末転倒も極まれりである。

 隠匿した内部文書
 (毎日新聞 4月24日付)

 横浜地裁に提訴から8年余、東京高裁へ控訴して3年余に及ぶ闘いの末の「全面勝訴」となった。原告・弁護団・「支える会」など関係者の皆さん方に、心よりねぎらいと祝福の気持ちを表したい。
 午後、議員会館で行われた判決報告集会も会場は満員であった。何よりも原告のお母さんの涙と笑顔がすべてを物語っているように思われた。また、岡田尚弁護団長をはじめ弁護士の皆さんの誇らしげな顔がとても印象的であった。

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 自衛官の「人権問題」にメディアや国民の関心が集まったのは、護衛艦「さわぎり」の人権侵害裁判が最初であった。乗組員Kさんが上司の執拗ないじめに遭って自死に追い込まれた事件(99年11月)は、提訴以来7年間の苦闘の末に福岡高裁で全面勝訴した経緯がある。
 

 ところで、自衛隊員の自殺は毎年80人前後を推移している。2003年から2012年までの10年間で893人(陸自549人・海自152人・空自127人・事務官65人)、隊員10万人あたりの自殺者数は36.4人(12年度)で、一般職国家公務員の約1.5倍である。自殺の原因は、「借財」「病苦」など様々だが、「その他・不明」が毎年約半数を占めており、この点が「いじめ」などによる自殺と推測される。
 現在、自衛隊のいじめ・セクハラなどに関する訴訟は、全国に広がりつつある。
しかし、防衛省はこうした痛ましい事件が起こるたびに、「個人の資質の問題」だとして自衛隊の「構造的な病根」であることを決して認めようとしない。事件の調査は自衛隊の捜査機関「警務隊」が行うが、所詮「身内による捜査」で限界がある。

 自衛官の自殺数2
  (三宅勝久氏の著作より引用)

 私の持論でもある「軍事オンブズマン制度」について、東京新聞・三浦耕喜記者の著作によると――戦後、ドイツが再軍備するときに、ナチスの教訓から二度と軍が悪用されないために設置された。兵士の不満や異論を議会がチェックすることで軍内部に潜む問題点を明らかにし、議会による軍の統制を図ることが目的だ。

こうした、軍事オンブズマン制度に関する国際会議が、09年以来すでに5回開催されている。また、欧州各国では軍人たちの“労働組合”が事実上作られており、軍人たちの人権や労働条件を求めて集会・デモ行動などが公然と繰り広げられているとのことだ。(第2回国際会議に出席された石村善治・福岡大学名誉教授の話し)

 ラインホルト・ロッベ氏
   (東京新聞 08年12月24日付)

日本でもできるだけ早く「軍事オンブズマン制度」を創設すべきだ。こうした自衛官の人権確立のための取り組みは、自衛隊を海外での戦争へと駆り立てる道から、国内外の災害救援など国民のための非軍事的組織へと改編・転換していくためにも不可欠なものだと確信する。
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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)