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「防衛計画の大綱」改定と空母保有に反対する

 「防衛計画の大綱」が5年ぶりに改定される。報道では、自衛隊が「本格的空母」の導入が「専守防衛」原則に反すると問題にしている(読売を除く)。

 海上自衛隊にとって、空母保有は長年の悲願だ。しかし、歴代内閣は憲法9条の下、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母は保有できないという見解を踏襲してきた。
 一方で、歴代の内閣法制局長官や防衛庁長官は、「保有しうる種類の空母はある。例えば、ヘリコプター搭載空母や垂直離着陸機搭載空母は、対潜水艦水上艦艇の一種と考えられ、保有できる」と繰り返し表明している。
 
   18.11.13朝日・防衛大綱の変遷

 実際、空母の実験艦ともいえる新型輸送艦が1993年度予算に盛り込まれた。
 私の旧知の故・佐々木芳隆氏(朝日新聞編集委員)がAERA誌(1993.4.13)で次のように問題にした。
――1993年度予算には、総額が5年間で503億円という戦車揚陸艦(基準排水量8900㌧型LST)の建造費用が盛り込まれている。90式戦車を運べるLCAC2隻を装備する。
 これまでの輸送艦は最大でも2000㌧。新型艦が完成すれば、大きさも性能も飛躍的に向上する。イギリスのジェーン海軍年鑑(92~93年版)は、「巨大な飛行甲板と艦尾ドックをもつイタリア海軍の強襲揚陸艦(LPD)に似たデザイン。明らかに複数のシーハリア―(垂直離着陸戦闘機)を運用することを想定しており、おそらくは空母建造に向かう中間的な一歩だろう」と論評している。
 こうした種類の空母建造では、大型ヘリや垂直離着陸機の重さや、エンジンから噴射される高熱・高圧の噴気に耐えられる強度・材質の飛行甲板など、技術の壁を乗り越えなければならない。
 海自制服組にとって、新型艦の建造と運用は技術上の困難を克服する実験の場と映るかもしれない。
 米国防総省や日本政府内で慎重論もあったが、それを振り払ったのは、国連PKO派遣という「国際貢献」の大義名分だった。

   「いずも」型護衛艦の問題点

 この新型艦は「おおすみ」という艦名で1998年に就役(満載排水量14000㌧)し、3隻が建造された。
 その後、ヘリコプター搭載護衛艦との呼称で、「ひゅうが」型(満載排水量19000㌧。2009年就役)、「いずも」型(満載排水量26000㌧。2015年就役)という具合に大型化している。

 今回導入されるのは「いずも」型護衛艦を改修して、垂直離着陸できる米国製の戦闘機F35Bを運用することを想定している。
 「攻撃型空母」との批判をかわすため「多用途運用護衛艦」との名称にするが、本格的空母であることは明白だ。岩屋毅防衛相は、「攻撃型空母は、戦闘機を常時搭載・運用し、他国を破壊可能とする能力を有する」「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するのは攻撃型空母に当たらない」と説明する。

 しかし、実際には、「安保法制」に基づいて米軍のF35Bが改造「いずも」に離発着して運用することが想定されていると見るべきだ。
 空母の導入が日本の防衛にどれほど役立つのか、巨額な費用に見合う効果があるのか、敵のミサイル攻撃から空母を守る方法などについて、政府は何ひとつ説明していない。
 空母の運用にあたっては、米国の場合、作戦任務・整備点検・交代のための航海で9隻必要とされる。自衛隊の場合、任務用・整備用・訓練用の少なくとも3隻が必要と言うが、そんな余裕はないだろう。

   18.12.9朝日・米国からの武器輸入(FMS)
   (朝日新聞 2018.12.9付)

 近年、日本政府の米国からの武器輸入はうなぎ登りだ。「対外有償軍事援助」(FMS)による米国製武器の来年度の購入額は、10年前の10倍以上に膨れ上がる。概算要求にはイージス・アショアやF35などを盛り込み、今年度比約7割増の6917億円にはね上がった。
 そのあおりを受けて、例えば射撃訓練の現場では実弾に事欠き口で「バーンバーン」と叫んでいるという。
 また、防衛省は、国内部品納入企業への支払いを先延ばししている有様だ。

 防衛省は、「防衛大綱」の改定理由の第一に国際環境の変化、つまり中国の脅威を挙げている。確かに中国は、国産空母の建造など軍備増強と外洋展開は目覚ましいものがあるが、空母には空母で対抗という発想は東アジアに軍拡競争を招くもので危うい。
 米国は、「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げるが、ASEAN諸国の中には米中の対立構図に巻き込まれることへの警戒と懸念の声もある。
 日本は、憲法9条に基づく「専守防衛」の立場を明確にして、米中対立の緩和に向けて外交努力をすることが求められている。そのためにも空母保有は断念すべきだと思う。


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水道の民営化に反対する

 「水道法改正案」――今国会で「入管法改正法案」に次ぐ重要法案は、政府のまともな答弁もないまま、採決強行された。

 改正案は、経営悪化が懸念される水道事業の基盤強化が主な目的。
安倍政権は公共部門の民間開放を成長戦略として推進。2013年に閣議決定した日本再興戦略で「企業に大きな市場と国際競争力強化のチャンスをもたらす」と位置付けていた。

   18.11.23朝日・水道法改正の概要
   (朝日新聞 2018.11.23付)

 今回の民営化の手法は「コンセッション方式」と呼ばれ、自治体が公共施設の所有権を持ち認可を手放さずに、運営権を民間企業に売却できる制度である。
契約期間は通常20年以上で、自治体が利用料金の上限を条例で決め、事業者の業務や経理を監視するとされる。

 この方式の導入を検討したのは6自治体。宮城県は市町村に水道水を「卸売り」する事業での導入を計画している。下水道事業で同方式を始めた浜松市は、水道でも導入できるか検討する。
 一方、検討を進めた大阪市と奈良市は議会の賛同を得られなかった。また、新潟、福井の両県では改正案に反対や慎重審議を求める意見書を可決している。

   水道事業のコンセッション方式のイメージ

 参院の厚生労働委員会での参考人質疑では、有識者から「料金高騰や必要な設備投資が行われない」、「欧米では企業が情報開示に応じない事例があった」などと、営利企業が運営を担う弊害への指摘が相次いだ。
 実際、民営化が広がった海外では水道料金の高騰や水質が悪化する問題が相次ぎ、近年は公営に戻す動きが加速している。2000年~15年で、パリなど37カ国の235水道事業が民営化後に再公営化された(英国調査団体のまとめ)。
 しかし、厚労省の調査は5年前の3件のみというお粗末さだ。

   横浜市
   (横浜市の水道管破裂)

 拓殖大の関吉基教授(環境政策学)は指摘する。「水道は地域独占。役員報酬や株主配当、法人税も生じ、適正な料金になるのか」、「契約は2030年で終わり、事業の最終責任は自治体が負うかたちで、営利企業が維持管理にどこまで真剣に取り組むのかも疑問」。
 そもそも民間が参入を希望するのは利益が見込める都市部が中心とみられる。課題が多い過疎地などの問題解決にはつながりそうにない。
 自治体も技術やノウハウが失われ、問題発生時や契約終了後に運営権を取り戻そうとしても担えない恐れがある。
 このところ、日本を代表するような多くの企業で不正事件が相次いでいる。こうした民間企業に、命にかかわる最も重要なインフラを任せるにはあまりにも問題が多いと言わざるを得ない。
 水道事業の危機の根幹は、人口減少と水道管の老朽化だ。水道管の限度は40年とされるが、1960年代の高度経済成長期に全国的に整備されて、地球を2周り半の長さになるという。とっくに寿命は尽きているが、すべて更新するには100年以上を要するという。耐震化などへの対応も必要で、かかる費用も極めて膨大だ。

   宮城県・南部山浄水場

 広域連携は、それぞれの利害が絡み、市町村任せでなかなか進まなかった。
人口減少時代に合わせ、水道インフラを再構築し、必要な負担をどう分かち合うか。自治体と住民が問題意識を共有し、国は必要な資金を提供する、そうしたことから始める以外にないと思う。
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外国人労働者と「入管法改正」問題を考える・その③

  前回報告した島原・加津佐の縫製会社での「中国人実習生問題」から11年を経た現在、「入管法改正法案」が国会で審議されている。

 すでに、衆院法務委員会では同法案が強行採決されて、本会議で与党や維新の会などの賛成多数で採決された。「重要広範議案」と言いながら、審議時間は〝カラ回し〟も含めて僅か17時間であった。
「来年4月より遅れれば、万単位の実習生が帰国してしまう」(山下貴司法相)との理由で、現在、参院で審議されており、今国会中での成立を急いでいる。

   ・入管法改正案の主な論点
   (朝日新聞)

 それにしてもお粗末極まる法案だ。「技能実習制度」は、途上国に日本の技能や知識を伝える「国際貢献」を目的に、1993年に始まった。2009年には在留資格「技能実習」が創設され、労働関係法令が適用されるようになった。
 しかし、その後も賃金不払いや長時間労働が後を絶たず、2016年には「技能実習適正化法」が成立。実習期間も経済界の要望で3年から5年に延び、受け入れ職種も拡大した。
 国内で働く外国人は過去最高の128万人(2017年10月、厚労省統計)。その内、昨年末の技能実習生は約27万人余で、約80職種で働いている。

   ・在留資格と特定技能の関係(18.11.16)
   (朝日新聞 2018.11.16付)

 今回の法案で新設されるのは、「特定技能1号」(相当程度の技能)と「特定技能2号」(熟練した技能)だが、その水準や測定法もはっきりしない。
 政府は、「14業種で初年度最大4万8千人、5年間で35万人」とする試算を発表したが、根拠は不明瞭だ。
 また政府は、新設する「特定技能」の資格で働く人として、技能実習生からの移行組を50~60%と見込んでいる。

 しかし、立場の弱い実習生につけ込む人権侵害も絶えない。実習生が受け入れ企業先から失踪する例が昨年だけで7千件を超え、問題になっている。
 法務省が調査した技能実習生2870人の失踪理由は「低賃金」が約67%、そのほかに「労働時間が長い」「指導が厳しい」「暴力を受けた」が続いている。
 失踪前の月給は「10万円以下」が1627人と過半数を占める。
 また、実習生の大半は来日前、母国の送り出し機関に100~150万円もの契約や借金をしており、転職や移動が制限されている実態がある。

   ・失踪した実習生への聞き取り調査(18.11.20)
   (朝日新聞 2018.11.20付)

 日本語教育や生活支援策、社会保障制度、治安対策といった「受け入れ態勢」も不透明なままだ。
 社会のありようを大きく変える可能性をはらむ政策転換であるのに、安倍首相は「今後示す」「検討している」と繰り返すばかりだ。
 法成立後に、簡単な手続きで改廃できる省令などで定める事項が多いと言われる。政府に白紙委任せよ、国会など無用だと言わんばかりの姿勢だ。

   ・法成立後に法務省令で定める主な項目

 法案の中身は移民政策そのものだ。受け入れの目的に応じて規模や期間、条件など、細部にわたり制度設計が必要だ。
しかし、政府・与党は「移民政策ではない」と言い切る。このことに関して、朝日新聞社のコラム『日曜に想う』(2018年11月11日付)に興味深い記事が載っていた。
――日本を多民族が共生する「移民国家に転換」しよう、そのために「今後50年で総人口の10%程度の移民を受け入れるのが相当」で、「国家行政機関として『移民庁』を設置」するべきだ――。

 10年前すでに、当時の福田康夫首相にそんな提言書を出した政治家たちがいた。自民党の議員約80人でつくった外国人材交流推進議員連盟である。
 「人材開国!日本型移民政策の提言」と題され、副題は「世界の若者が移住したいと憧れる国の構築に向けて」。
 単に労働力不足を論じているのではない。すさまじい高齢化や人口減少を国家の危機と捉えている。
 提言が呼びかける「50年で1千万人の移民」は年間にすると20万人。現に今、移民はその水準で増え始めている。

  介護業、外国人材の受け入れの積算根拠
   (朝日新聞)


 安倍首相は国会で、国民の人口に比して一定程度の外国人や家族を受け入れて「国家を維持していくことは考えていない」と述べた。外国人に求めるのは労働力という姿勢だ。
 提言は、この国が必要としているのは労働力より新たな国民だという現実を直視していた。
 野党の「入管法改正法案」に対する批判は的を得ている。中身がスカスカの同法案は廃案にすべきだ。では、提言に言う移民政策と国家のあり様について果たして覚悟があるだろうか。
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外国人労働者と「入管法改正」問題を考える・その②

  前回に続き久保田達郎氏のレポートを続ける。
会社に交渉を申し入れたのは、参議院選挙明けの7月30日。会社は「素直」に交渉に応じた。こちらがあらかじめ示していた質問事項に沿って、実態の説明を行った。
➀中国人は協同組合(同業者5社)が受け入れている。➁労働時間は年間260日出勤(2080時間)を協定。➂賃金は、月平均(21.66日)の労働時間に最賃(611円)を乗じた10万6000円を支給。➃残業を1時間400円とし、「内職賃金」として計算。本来の残業時給との差額360円余が「未払い」となる。➄「内職」の実態は月100時間前後。月36000円、年3万円余が未払いとなる。➅会社の説明では、実習生の送り出し機関(中国)も残業400円を了解し、本人たちも合意しており、「内職」はそのための「便宜」であると言うが、「違法」は免れない。

 「これは帰国する17人だけでなく、残りの1年生2年生にも影響する。協同組合全体にも関わる問題。メーカーからの単価は切り下げられる。昨年の決算は赤字。銀行への返済は延ばせない。日本人労働者40人にはボーナスも我慢してもらっている。なんとか穏便に解決してほしい」――社長の「哀願」は切実である。
この種問題で語られる「女工哀史」だけでは説明できない現実を痛感してならない。

 会社は、一定の金額を「退職慰労金」として支払う意向を示した。
が、今度は、17人が納得しないのである。「会社は儲かっている」、「法律どおり支払ってほしい」。異口同音に言う、それは絶叫であった。
 なんとも変な交渉になっている。実習生の意向を実現すべき交渉が、実習生に妥協を求める交渉。そこには、「違法状態」を承知の上で就労させねば成り立たない地場縫製業の実態がある。
違法を摘発し、法に基づき監督署が処理すれば、精算が命じられ、不可能ならば倒産だ。
こうした違法な状態は、監督署も、行政も、JITCO(国際研修協力機構)も十分承知のはず。にもかかわらず「黙認」し、内部の「解決」に任せる、この無責任さ。事なかれ主義の典型。

 この問題はますます深刻な事態になってきた。堂々巡りの議論を打ち切り、この労働相談を持ち込んだ連合・岐阜に事態を報告した。
 ここにきて懸念される事態が二つ生じた。一つは、17人が就労を拒否し寮に立てこもったことだ。出入国管理局にばれると、強制帰国させられる(※中国側の送り出し機関に「保証金」などを納入していれば、即没収である)。
もう一つは、彼女ら(17人)の背後で誰かが「指導」(扇動)している。相談者は交渉が行き詰まれば、あちらこちらに「直訴」する。受けた側は自らの経験と判断で「指導」して、変な誤解と幻想を抱かせてしまう。

 日本では、金銭解決を前提とした事案は、何回かの交渉で一定の妥結点を見出せる。だが、今回は雲行きが違う。17人は一人100万円を譲歩する気はない(※中国の家族からは「100万円取ってこなければ家に入れない」との話しもあるという)。
17人の帰国(8月28日)まで時間が迫っている。ところが、24日、実習生4人が全国一般・長崎地本の事務所にやってきた。倒産したK社に就労していた時、親切にしてくれた「おジーちゃんに送ってもらった」のだと言う。
 「100万円はあきらめるので50万円をお願いします」という。

   失踪した実習生への聞き取り調査(18.11.20)
   (本記事とは無関係のグラフ)

 再度、交渉をやり直して、「退職一時金」は24万円(実質30万円)、17人で500万円強の支出は会社にとって厳しい、暗澹となる社長が気の毒でならなかった。
 社長は、「福岡から上海便で帰すことにしたので、お金は久保田さんから渡してください」と言う。
福岡までの車中で社長は、「少し高かったが授業料と思い、今後に生かしたい」。「これを機会に、会社や協同組合の相談にも乗ってほしい」と要請される。
 「いや、私は組合のアドバイザーですから」とやんわり断る。

   中華街・中国人実習生らと
   (長崎中華街で中国人実習生らと)

 空港の国際線ロビーには、化粧をし、着飾った17人の実習生が待っていた。「何時になく綺麗だ」と言ったら、「私たちいつも綺麗」と即座に反論された。
最後に、「社長もいろいろ無理してこの金を作った。お礼を言って帰れよ」と頼んだ。即座に「いやだ!」ときた。

 この「事件」を機に、久保田氏は中国語教室に通い始めた。これから、もこうした実習生問題が生起するに違いないと予感したからである。
 この予感は、11年後の現在、見事に的中した。中国人だけでなく、現在はベトナム人の「実習生」が日本にやってきている。
 長崎県内で中小零細企業で働く人たちの労働相談を一手に引き受け、労働委員会や裁判所での「争議」では弁護士より詳しくて、誰よりも頼りにされた久保田氏は2年前の11月に帰らぬ人となった。

 次回は、今国会で審議中の「入管法改正」問題について書いてみたい。
                                          (2018年11月23日)
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外国人労働者問題と「出入国管理法改正」について考える~その①島原・加津佐での実例

 外国人労働者の受け入れを拡大するための「出入国管理法・改正案」の国会審議が始まった。
 外国人の人権保護や共生社会のあり方など重要な課題が多い。
 だけど、改正案には省令で定めるとされる事項が多い。外国人の在留資格として新たに設ける「特定技能」でも、受け入れる業種・分野はもちろん、「上限5年」とする在留期間も正式には省令で定めるという。
 これでは、日本のまともな将来像を議論することはできない。

 この問題は、2~3回に分けてレポートしたい。
 まず、長崎県内での「中国人実習生」問題について、報告しておきたい。この問題では、久保田達郎氏(連合長崎アドバイザー)の中心的役割とご苦労抜きに語れない。同氏が機関誌「ながさき自治研」(長崎県地方自治研究センター発行)のNo.47号に詳細なレポートより抜粋してみる。

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   (久保田達郎氏・連合長崎アドバイザー)

――2007年7月から8月末にかけ、南島原市加津佐町の縫製会社で発生した中国人実習生(女性)17人の「労働相談」に対応した。
 交渉は困難を極めた。主たる原因は、会社との交渉というより中国人実習生の説得に数倍の労力を費やさなければならなかった点にある。私の常識が、彼女らには通用しない現実を知らされた。

ここで、この種「外国人研修制度」について、若干解説しておきたい。同制度は、1993年から本格的に適用されている。本来の趣旨は、日本の進歩的な技術を途上国へ伝えるとされている。期限は3年。1年目が研修、研修期間が経過すると、簡単な技能テストを行い、合格すれば(ほぼ全員が合格する)実習生となり、最長2年間同事業所での就労が認められる。正式な労働者である。日本の労働者と同等の待遇が(法の適用)求められる。

   島原半島観光マップ-1[1]

 いま、日本で働く外国人研修・実習生は約12万人と推定されているが、その殆どが中国人である。来日する中国人は、研修ではなく「出稼ぎ」である。
 そして、受け入れている日本の企業は(例えば本件の縫製業)中国人実習生を最賃以下の安価な賃金で働かせることで、「かろうじて」生き延びている。同時に、その低額な賃金も、中国人実習生にとっては、自国で得られる賃金よりはるかに高額という現実もある。

 本件を法律違反として摘発するのは簡単である。だが、摘発した結果どうなるのか。企業は莫大な未払い賃金の清算などで、倒産する以外にあるまい。それは、経営者のみならず、そこで働く日本人労働者の失職をも意味する。
 日本の労働者、労働組合として如何にあるべきか、グローバル化した今日、避けては通れない課題である。

   労働法令違反があった技能実習生受け入れ企業の事業場数
   (朝日新聞 2018.11.9付)

 外国人労働者からの相談には二重三重の「壁」が存在する。
 一つは、言葉の壁である。幸い今回は、島鉄タクシー労組元委員長夫人Nさん(台湾出身)に通訳を引き受けていただいた。
 もう一つの「壁」は、実習生との連絡である。「指定電話」は会社の寮の電話で、午後10時以降という「時間限定」である。携帯電話はもちろん厳禁。

 何かと不自由な中に彼女らと会うには、長崎から南島原(加津佐)まで車で約3時間要する。
 到着すると、会社の寮の近くで薄暗い車中で彼女ら二人から事情を聞くこととなった。
 彼女らは、1年目が時給300円、2年目、3年目が400円。残業は「内職」という名目で時給400円程度(毎月100時間を超える)。3度の食事は寮生の自炊。必要経費は実習生の割り勘(平均月に7000円程度)、寮費3500円は給料から天引き。そんなことを語ってくれた。

 日本と中国(あるいは韓国・北朝鮮)、「近くて遠い国」と言われる。歴史認識・靖国・拉致問題など「鋭い対立」が続いている。これら歴史的事実から目をそらしてはならない。
 だが当面、「外国人研修制度」という新たな問題に向き合ってみたい。これは労働問題であり、政治問題でもある。受け入れた日本の縫製業も不況産業の典型。難題である。「火中の栗」を拾うようなものだ。だが、逃げてはなるまい。密かにそう決意した。

                       (以下、次号に続く)
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今川正美のブログへようこそ!

生年月日 1947年8月7日
住  所 長崎県佐世保市
学  歴 佐世保北高等学校
     卒業(66年)
     佐賀大学農学部農
     学科中退(68年)
職  歴 佐世保地区労書記
       (68年)
     佐世保地区労事務
     局長(94年)
政 治 歴 衆議院議員
     (2000年・1期
      社会民主党)